矛盾 ページ3
No side
季節は変わり、春。
北原家が新しい家＿前の一軒家よりも狭い宿舎の一室＿にも慣れ始めた頃。
長太郎と椎菜の間であの爆発は悠里の異能力ではないかという話になった。
あの時悠里は薪を並べただけで火を付けられるものは何一つ持っていなかった。そして持っていたとしてもあんな爆発を引き起こすのは無理だろう、と思ったからである。
幸い2人には異能力に対して理解があった。
2人の共通の知人がそのような関係の仕事についていたのである。
「あの子の力は危険だわ」
「そうだね。力を持っているのを知られたら色々な組織から狙われるかもしれない」
今のところ悠里の異能力がどの程度のものなのか、素人の2人には分からない。
でも6歳の子供が使える威力ではないことは確かだ。
ヨコハマにはあの恐ろしいポート・マフィアという組織が存在する。
「悠里は異能力なんかなくても充分に生きていけるほど賢いもの。…でも今は私達が守らなきゃ」
「そうだね。僕達があの子が1人で生きていけるまで守ってあげないとね」
長太郎が椎菜を抱きしめ、椎菜も身を預ける。
悠里が眠ってしまった後の夜の時間だけがこの話をできる時間だった。
悠里のことは愛おしい。でもあの力を見てどこか『恐怖』を感じてしまった自分がいる。
かと言って自分達の子供を嫌いになったわけでも、ましてや憎いと思っているわけでもない。
矛盾するこの感情をお互い打ち明けることで楽になれた。
悠里の前では笑って惜しみない愛情を注いでいられた。
どちらかがいなければ以前のような愛情溢れた家族には戻れなかったかもしれない。
「私、ちゃんと『お母さん』でいられてるかなぁ…」
「大丈夫だよ。君は立派な『お母さん』だ。悠里のあの笑顔が何よりの証拠だよ」
「うん…うん」
泣き出す椎菜の背を長太郎が優しく摩る。
「悠里は賢い子だから僕達がおかしいとすぐに見つけてしまうよね」
「そうだね」
「風邪をひいた時も、怪我をした時も。1番最初に気づくのは悠里だった」
「うん」
2人は傍で気持ちよさそうに眠る悠里を見つめながら、お互いの手をぎゅっと握る。
椎菜が空いている手で頭を撫でると、嬉しそうに頭を擦り付けた。
「だから、朝までにその涙と、僕達の気持ちは隠そうね」
「分かってる」
「椎菜…愛してるよ」
「私も愛してる」
流れた涙を拭きながら、家族のことを思って。
こうして2人の夜は更けていく。
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でこぽん(プロフ) - ららさん、shikibuchan00さん、本当にありがとうございます！こんな更新遅い作品を応援してくださる読者の皆様は本当に神様です！頑張ります！！ (2020年8月19日 2時) (
レス) id: 80518ccaaf (このIDを非表示/違反報告)
shikibuchan00(プロフ) - 何回も読み直すくらいには大好きです！！応援しています！ (2020年8月17日 22時) (レス) id: dc2c4f0c7f (このIDを非表示/違反報告)
らら - このシリーズ本当に好きです！応援してます！ (2020年8月8日 14時) (レス) id: 160b3d1fa3 (このIDを非表示/違反報告)
でこぽん(プロフ) - ありがとうございます！最近更新できてなくて申し訳ないですが頑張ってまいります！ (2020年1月23日 23時) (レス) id: 80518ccaaf (このIDを非表示/違反報告)
ゆ - すんごい面白いです！ひとつめの作品から読ませていただいてます悠里さんかっこいいですね好きです最近寒いですよね！！(困惑) (2019年12月15日 23時) (レス) id: 42869b6ef5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：でこぽん | 作成日時：2019年7月5日 8時
