ショタが34人 ページ8
私が家庭教師を本格的に辞めるのは、六月の梅雨入りの時期になってからだった。
玄関で愛用のスニーカーを履き、立ち上がって冬美先輩にお礼を言う。
「冬美先輩、今までお世話になりました」
「こちらこそ、半強制的に焦凍の家庭教師させてごめんねえ」
半強制的に、というのは知ってて薦めたのか……
冬美先輩、たまに少し強引な所あるなあ、と心の隅っこでそう思う。
「そういや焦凍、Aちゃんの見送りしないのよ。頑なに『行かない』って言ってて……ごめんね」
「いえ、大丈夫です」
数日前、エンデヴァーに『辞めろ』発言されてから焦凍くんに報告した所、『辞めないで』って悲願された。
やだやだとボロボロ涙を流して駄々をこねる焦凍くんは、今までになく悲しそうな顔をしていて、私まで悲しい気持ちになった。
『やだ。Aお姉さん、辞めないで。お願い……』
『……そうだね、私だって辞めたくないけど、そうはいかないんだよ。焦凍くんの為にも』
『…………』
『泣かないで、焦凍くん』
あの時の私はとても冷静だった。
いつもの私だったら、焦ってあわわわって困っている所だっただろう。
それより、焦凍くんが見送りに来てくれないのは、やっぱり寂しく感じる。
やっぱりショックだったかなあ。
そんなに大事に思っていてくれたのかなあ。
色んな事が頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。
そんな中、外からざあざあと雨が降る音が聞こえて来た。
さっきまではぽつぽつと小雨が降っていたが、どうやらどんどん大雨になって来ている。
「冬美先輩、雨も強くなって来たのでそろそろここで」
「あ、そうだったね。無理に引き留めてごめんねAちゃん」
「いえ、そんな事無いですよ」
そんなやり取りをしながら、玄関の引戸をガラリと開け、傘立てに立てたビニール傘を取り出し開く。
「また暇があったら何時でも来ていいからね」
「……去年と違って勉強とか部活動とかあるので、中々来れないと思います」
「そっかあ……残念だけど、待ってるね。焦凍もきっと楽しみにしてるよ」
「はい、さよなら」
「うん、バイバイ」
ペコリと冬美先輩にお辞儀をしてからその場を後にした。
家に帰る道中、溢れそうになった涙を、舌を噛んで我慢する。
ざあざあと降る雨が、私の代わりに涙を流してくれた。
(焦凍くん、バイバイ)
(次に会えるのはいつだろうな)
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みずい(プロフ) - ショタろき君可愛ヨ…。( ˙-˙ )続き期待しています!!! (2019年8月14日 1時) (レス) id: 0388b1704d (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - 沢山のコメントありがとうございます。気が向けば夢主ちゃんと轟くんが付き合う話も書こうかと考えておりますので、宜しくお願いします。 (2018年7月19日 13時) (レス) id: 30a7b63eb1 (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 完結、おめでとうございます。もし、この後結婚の予定があれば、その時は私も駆けつけます!!お疲れ様でした。これからも頑張って下さい! (2018年7月19日 6時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
きよりん(プロフ) - ミミさん» サラッと終わったので驚きました(笑) 完結おめでとうございます☆2人の未来が凄く気になりますが絶対に幸せになると信じています!お疲れ様でした! (2018年7月19日 0時) (レス) id: 5f1549994e (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - はい、そうです。長い間この作品を読んで下さりありがとうございました。これからも宜しくお願いします。 (2018年7月19日 0時) (レス) id: 30a7b63eb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミミ | 作成日時:2018年4月16日 23時