52.東京 ページ4
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「真奈さんは学校やないんですか?」
「3年生はもう自由登校やで〜。
せやから大学の課題やりにきてん」
ああそっか。
北高も、3年生の既に進学先が決まっている人たちはほとんどが学校に来ておらず、自宅で大学から出される宿題をしているって、先生が言っていた。
「大学決まったんですか?」
「せやで〜東京の大学にな」
「東京?」
「うん。せやから卒業式終わったら色々準備して、春からは東京で一人暮らし」
東京。
現実味のない言葉に現実味のない、未知の世界を想像しながら。
ひたすらに、大吾くんのことを考えていた。
「・・・大吾くんは、知ってるんですよね?」
「大ちゃん?もちろん〜。
大ちゃんが一番に応援してくれてん。
受験前もずーっと勉強付き合ってくれて、大ちゃん賢いから、1年の基礎的なとこは丸々大ちゃんから教え直してもらったし。
ほんま、優しいねん。大ちゃん」
大吾くんは優しい。
それは、私だって、いっぱいいっぱい知っているはずなのに。
真奈さんが話す、大吾くんの姿に、
私はまた、悲しくなる。
本当に優しくされていた人の、
ちがいを、思い知る。
真奈さんが、机の上のワークに視線を落として、
ひとつひとつ、問題を確認するように、数字をなぞっていく。
「1年の数学のさ、この辺、むずいよね」
「難しいです。正直授業ついてくだけで精一杯です」
「やんなあ。うちも。
せやけど、大学受験の応用でめっちゃ基礎使うってなってな、大ちゃんがいっぱい教えてくれてん」
「大吾くん、が、」
「そう!この問題とか、丸っ切り同じようなやつ何回も解き直してな」
言葉が、右から左へと流されていく。
というか、意図的に、
聞くことを拒んでいたんだと思う。
こんなに同じ時間を過ごして来たのに、
どうして、大吾くんを見てあげないの?
私はもういいんだ。
きっともう、大吾くんは、私とは会ってくれない。
そもそもの理由だった真奈さんと遥生先輩が7時電に乗っていないのだから、大吾くんが始発に戻ってくることはないだろう。
だからせめて、大吾くんには。
好きな人には、
幸せになってほしい。
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もんもん(プロフ) - 遅ればせながら読み終えました!良い長編に久しぶりに出会えました泣 とても感動して胸が苦しかったですーーー!!すてきな作品をありがとうございます❤️ (2022年3月10日 4時) (レス) @page41 id: d795766383 (このIDを非表示/違反報告)
もか(プロフ) - Minさん» ありがとうございます。主に新作の方をメインに更新していくと思いますので、こちらはもしかしたらゆるゆる更新になってしまうかもしれません(><)申し訳ないのですが、応援して下さるとありがたいです! (2020年8月20日 22時) (レス) id: 4d5287210d (このIDを非表示/違反報告)
Min(プロフ) - 番外編、嬉し過ぎます(^^)続きが気になってます!新作も見ますね☆頑張って下さい! (2020年8月15日 19時) (レス) id: 54e8e6f468 (このIDを非表示/違反報告)
もか(プロフ) - いろはさん» またまたコメントありがとうございます!また2人を書けて私も楽しいです(*^^*)マイペース更新になるとは思いますが見守って頂けたらありがたいです! (2020年8月15日 15時) (レス) id: 4d5287210d (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - 番外編!すごく嬉しいですー\(^o^)/不器用な大吾くんがこれまた可愛い(*´ω`*)続きどうなるのかな?って、ワクワクしてます!更新楽しみにしてます(^^) (2020年8月15日 15時) (レス) id: 299f92273d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もか | 作成日時:2020年6月7日 22時