６８．好きってこと ページ22
．
大吾くんが次に好きになるのは、私ではないかもしれない。
それでも、彼のあの長い長い片想いを終わらせることが、私にしかできないことなのだとしたら、それってちょっとだけ、素敵なことかもしれないって思った。
大橋くんがそうしてくれたみたいに、
私は、好きな人の幸せを願ってあげたいから。
ひとり、ふたりと周りに人が増えてきて、しばらくして学校方面へと向かう電車が動き出した。
30分前に見た景色と、まんま同じものを逆再生で見ているみたいで、不思議だった。
そんなことを考えながら、流れる風景を見つめていたら大橋くんが何やらスマホの画面を差し出してきて、覗くと大橋くんとそのお友達が、ものすごく変な顔して、決めポーズをしている写真を見せられた。
「ふふっ、なにこれ」
「去年の地区大会の帰りに準優勝記念で撮った。めっちゃくだらんやろ」
「うん、ふふ、くだらない。へんなかお」
スマホに顔を寄せ合って、お互いにくすくすと笑い合う。
さっきまで好きだとか好きじゃないとか、そんなことを言い合っていたなんて思えないくらい、ふつうの、友達としての距離感に、安心した。
・・・大吾くんともまた、こんな風に笑い合えたらいいのにな。
恋人じゃなくても、友達じゃなくても。
苦しくても、手を離したくても。
結局は、好きだって思ってしまうんだから、
だからいっそ、どんな関係性でもいいから、もう一度笑いかけてほしい。
電車を降りると、じゃあまた！って手を振った大橋くんが少しだけ駆け足で、反対方向へと向かって行った。
私は歩いてもHRには間に合うけれど、
西校は北高より少しだけ遠いから。
いそげー！って叫んだら振り向いた大橋くんがそっちもって笑った。
道の端で、桜の花びらが踊っている。
今日の帰りの電車は、いつもより一本遅いものに乗ろうと決めていた。大吾くんは、その電車に乗っているって、大橋くんが教えてくれた。
あんなにも、会う勇気が持ていなかったことが、嘘みたいに、今は早く大吾くんに会いたくて仕方なかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 600人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「なにわ男子」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もんもん(プロフ) - 遅ればせながら読み終えました！良い長編に久しぶりに出会えました泣 とても感動して胸が苦しかったですーーー！！すてきな作品をありがとうございます❤️ (2022年3月10日 4時) (
レス) @page41 id: d795766383 (このIDを非表示/違反報告)
もか(プロフ) - Minさん» ありがとうございます。主に新作の方をメインに更新していくと思いますので、こちらはもしかしたらゆるゆる更新になってしまうかもしれません(＞＜)申し訳ないのですが、応援して下さるとありがたいです！ (2020年8月20日 22時) (レス) id: 4d5287210d (このIDを非表示/違反報告)
Min(プロフ) - 番外編、嬉し過ぎます(^^)続きが気になってます！新作も見ますね☆頑張って下さい！ (2020年8月15日 19時) (レス) id: 54e8e6f468 (このIDを非表示/違反報告)
もか(プロフ) - いろはさん» またまたコメントありがとうございます！また2人を書けて私も楽しいです(*^^*)マイペース更新になるとは思いますが見守って頂けたらありがたいです！ (2020年8月15日 15時) (レス) id: 4d5287210d (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - 番外編！すごく嬉しいですー＼(^o^)／不器用な大吾くんがこれまた可愛い(*´ω｀*)続きどうなるのかな？って、ワクワクしてます！更新楽しみにしてます(^^) (2020年8月15日 15時) (レス) id: 299f92273d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もか | 作成日時：2020年6月7日 22時
