６７．臆病 ページ21
．
話し終えた大橋くんが、私を見て、微笑んだ。
風が吹いて、春の匂いがした。
あれからもうずっと、会っていないなんて、嘘みたいに、引き戻される。諦めたいと言った数分前の自分が、萎んで、消えていく。
「Aちゃんの話聞いて、辻褄が合っちゃったんだよね。大ちゃんが、始発に乗らんくなった理由も、Aちゃんの話をしなくなった理由も。
・・・大ちゃんがAちゃんのこと、どう思っとるのかも」
大吾くんは、私のことなんて嫌いなんだって、思っていた。
ずっとずっと、避けられていると思っていた。
もう好きだなんて言わないから、友達でいいから、そばにいたいんだって。本当は、幾度となく思っていた。
「わたし・・・どうすればええ？」
もう一度、好きだと言ってもいいのかな。
会いに行ってもいいのかな。
あまりにも時間が流れてしまった恋心を動かすには、私はあまりにも臆病で、怖がりだ。
傷つくのが怖い。
もう、あんな大吾くんの顔を見たくない。
「分からんよ、そんなの。Aちゃんが会いたいなら会いに行けばええし、言いたいことがあるなら言えばええと思うけどね」
「でも大吾くんは、私になんて会いたくないかも、」
ぎゅ、とスカートの裾を握って俯くと、
大橋くんが大袈裟にため息をついて、次の瞬間、額に僅かな痛みが走った。
「いったぁ！ええ・・・何でデコピンするん、痛いやん」
「あんまりうじうじしてるから、むかついてつい」
「むかついたって・・・うちに？」
「Aちゃんと。大ちゃん」
額を抑えていた手を大橋くんにとられて、
そのまま、やんわりと重ねるように握られた。
悪戯っ子みたいに細められた瞳に、眉を潜めた私の顔が映り込む。
「俺の話聞いても、まだそんなこと思う？」
「・・・思いたくない、けど、」
「んーもう！うじうじ大ちゃんを立ち直らせるにはAちゃんしかおらんのやで！？しゃきっとしろー！しゃきっと！」
握った手を強く振り上げて、あまりにも必死に、そんなことを言うから、思わず笑みが溢れる。
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もんもん(プロフ) - 遅ればせながら読み終えました！良い長編に久しぶりに出会えました泣 とても感動して胸が苦しかったですーーー！！すてきな作品をありがとうございます❤️ (2022年3月10日 4時) (
レス) @page41 id: d795766383 (このIDを非表示/違反報告)
もか(プロフ) - Minさん» ありがとうございます。主に新作の方をメインに更新していくと思いますので、こちらはもしかしたらゆるゆる更新になってしまうかもしれません(＞＜)申し訳ないのですが、応援して下さるとありがたいです！ (2020年8月20日 22時) (レス) id: 4d5287210d (このIDを非表示/違反報告)
Min(プロフ) - 番外編、嬉し過ぎます(^^)続きが気になってます！新作も見ますね☆頑張って下さい！ (2020年8月15日 19時) (レス) id: 54e8e6f468 (このIDを非表示/違反報告)
もか(プロフ) - いろはさん» またまたコメントありがとうございます！また2人を書けて私も楽しいです(*^^*)マイペース更新になるとは思いますが見守って頂けたらありがたいです！ (2020年8月15日 15時) (レス) id: 4d5287210d (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - 番外編！すごく嬉しいですー＼(^o^)／不器用な大吾くんがこれまた可愛い(*´ω｀*)続きどうなるのかな？って、ワクワクしてます！更新楽しみにしてます(^^) (2020年8月15日 15時) (レス) id: 299f92273d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もか | 作成日時：2020年6月7日 22時
