4話 ページ5
もの凄い形相の熊が俺を殺せる距離に来たところで、俺は反射的に目をつぶってしまった。
やっぱり死ぬんだ。
いくら転生させてもらったとは言え、運も実力も無ければすぐ積んでしまう。
わかっていたのに。
死にたくなかったな。
今回は、死ぬ時に痛みは無いのか。
でも即死だったり?
いやでも、外の音は聞こえる。
脱力感もない。地面に立っている感覚はある。
手に握っている枝の握る強さも変わらない。
…?
そっと目を開けた。
「大丈夫だったかの?小僧よ。」
ゑ。
たった数秒、目を閉じていた間にも状況はガラリと変わっていた。
熊のいるべき目の前に老人が立っている。
熊よりも、とても大きい存在感だ。
後ろに熊が伏せているが、この人が倒したのだろうか?
「?腰が抜けたか?若いのに情けないのぅ」
うぉ…
呆気に取られていると、その老人は俺に手を差し伸べていた。
それだけなのにびっくりしてしまい、肩が跳ねてしまった。
自分が怖がられていると思ったのか老人の眉も下がり、困った顔をした。
も、申し訳ない…
って、うおぅ。
「とりあえず子供がこんな森に居ては危ないからの。ひとまず里に戻ろう。大丈夫じゃ、安心せい。何も怖いことなどありゃせんわ」
抱っこされ、老人のペースで歩き始める。
宥める言葉もかけられる。
どこか安心できる。暖かみのある声だ。
思えば、こうやって背中をポンポンされるのもいつぶりか。
やはり、高あるものは強いな…
「お主、名前を教えてくれんか?」
名前?
俺の名前は…
「…A。俺はAって言う」
いくつか老人と言葉を交わしたが、
その後は眠気に勝てず寝てしまった。
脳が少し熱くなった。
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作者名:Roji | 作成日時:2017年9月17日 13時