27話 ページ30
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「………聞きそびれてたんだけどよ…Aは、鬼を絶滅させるのはどう思ってるんだ?」
『…えっ』
思わぬ質問に動揺していると、胸の中で慰めていたバーバラも口を開いた。
上目遣いだが、その金の瞳は僅かに揺らいでいる。
「A……ねぇ、Aは、
そう微かに声を震わせながら聞いてきたバーバラは、
まるで縋るような雰囲気を醸し出していた。
ちらりとヴィンセントを見ると、首を横に振っていた。
きっとこの状況をどうにかできる立場じゃない事を察しているんだろう。
………私自身の意思なんて、考えた事がなかった。
転生してから、常に原作通りに進む事ばかりを考えていた。
本当の未来に辿り着くためには、ノーマンの立てている絶滅の計画も受け入れる必要があった。
私の出る幕なんて、本当はなかったのにな。
「Aは、アタシ達の味方…だよね?」
『ッ、バーバラ…』
何も答えられずに口を固く閉じてしまう。
…もし、私がここが「約束のネバーランド」の世界だと知っていなければきっとあっさり絶滅を受け入れていた。
だけど、私だけが全てを知ってしまったのだ。
鬼は人間を食べなきゃ生きられない。
食べ続けなければ花が萎むように退化して、やがて自我までも失っていく。
私は直接体験したわけではないが、自分が自分でなくなる恐怖は誰よりも理解している。
この身体の生まれて以来、私は何度も本当の自分を見失いそうになった。
元の世界で過ごした温かな日々が、いつの間にか恐怖で上書きされようとしていた。
その恐怖を鬼達は常に目の当たりにしなければいけないのだ。
何日も何倍も…
だから────────
『………わから、ない……。』
小さく開いた唇から、掠れそうな声が漏れ出た。
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作者名:サナ | 作成日時:2020年9月22日 17時