検索窓
今日:9 hit、昨日:13 hit、合計:164,793 hit

27話 ページ30

.


.



「………聞きそびれてたんだけどよ…Aは、鬼を絶滅させるのはどう思ってるんだ?」



『…えっ』




思わぬ質問に動揺していると、胸の中で慰めていたバーバラも口を開いた。

上目遣いだが、その金の瞳は僅かに揺らいでいる。








「A……ねぇ、Aは、こっち(・・・)だよね…?」







そう微かに声を震わせながら聞いてきたバーバラは、
まるで縋るような雰囲気を醸し出していた。


ちらりとヴィンセントを見ると、首を横に振っていた。
きっとこの状況をどうにかできる立場じゃない事を察しているんだろう。






………私自身の意思なんて、考えた事がなかった。
 





転生してから、常に原作通りに進む事ばかりを考えていた。
本当の未来に辿り着くためには、ノーマンの立てている絶滅の計画も受け入れる必要があった。





私の出る幕なんて、本当はなかったのにな。

 




「Aは、アタシ達の味方…だよね?」




『ッ、バーバラ…』





何も答えられずに口を固く閉じてしまう。





…もし、私がここが「約束のネバーランド」の世界だと知っていなければきっとあっさり絶滅を受け入れていた。

だけど、私だけが全てを知ってしまったのだ。



 


鬼は人間を食べなきゃ生きられない。



食べ続けなければ花が萎むように退化して、やがて自我までも失っていく。
私は直接体験したわけではないが、自分が自分でなくなる恐怖は誰よりも理解している。






この身体の生まれて以来、私は何度も本当の自分を見失いそうになった。


元の世界で過ごした温かな日々が、いつの間にか恐怖で上書きされようとしていた。


その恐怖を鬼達は常に目の当たりにしなければいけないのだ。
何日も何倍も…






だから────────









『………わから、ない……。』
 







小さく開いた唇から、掠れそうな声が漏れ出た。
 




.



.

28話→←26話



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (76 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
163人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:サナ | 作成日時:2020年9月22日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。