ー意気地なしな俺はーヘタリア

16話 ページ18

いっとき甲板に居たが流石に寒くなったのですぐに戻った。
すると、駆逐艦響からの付き合いの彼等に出会った。私だけかと思っていたら彼等も来ていたらしい。来ることを教えてくれても良いのに…なんて思いながら声をかけた。

「貴方方も来ていたんだね、来るなら来るで言ってくれてもいいんじゃない？」

そう微笑みながら言うと“さぷらいずだよ”なんて言ってきた。
何がどうサプライズになるのかよく分からなくて思わず苦笑してしまった。

「まぁ、いいだろう？ここは戦場なんだ。偶には肩の荷を下ろさないとやってられないさ」

そう言う彼等についていくと甲板に出た。
そこには沢山の搭乗員がいて、待ってましたとばかりに手を振ってきた。

「やっと揃ったな、では今から始めるぞ」

何が始まるのか見当もつかないので、私はとりあえず聞いてみることにした。

「いったい何をするの？」

「あぁ、伝え忘れていたね、舞鶴鎮守府と呉鎮守府の思い出話みたいなものをしようと思ってね」

舞鶴鎮守府と言うのは、私が駆逐艦響と共に戦っていた時の基地であり、福島中佐にとてもお世話になった場所。
呉鎮守府は今配属されている基地で、戦艦大和が配属されている場所。
呉鎮守府のことについてはまだまだ知らないことだらけだし、いい機会かもしれない。

「それは良いね、呉鎮守府の事沢山教えてよ」

「では、話すぞ、呉鎮守府は広島県呉市にあるんだが、それは知っているだろう。因みに1886年に作られたんだ。開戦前は沢山の軍艦が作られていた。去年も空母が一隻作られたぞ。」

呉鎮守府と言えば横須賀鎮守府に次いで凄い鎮守府なんだよね…
戦時中で、それに加えて資材も不足しているのに流石だ。

「他にもたくさんあるぞ。そうだな、有名かはわからないが呉軍港空襲は酷かった。あの時は沢山の艦が小破以上の損害が出たからな…一戦で共に戦ってきた奴らもあの空襲で死んだ。生きていれば今ここで束の間ではあるが談笑出来ていたかもしれない…だが、今彼らの死を否定しても彼らは喜ばないだろうから」

悲しそうに話す彼の眼は少しだけ潤んでいた。
舞鶴鎮守府にいた時は空襲の被害は受けなかった。彼らは戦場以外の場所でも戦っているんだなと思うと胸の奥がギュッと締め付けられるような感覚になった。シェル・ショック(戦闘ストレス反応)を起こしてもおかしくない状況なのに…
私ならきっと耐えられないだろう。
話してくれた彼は“少し席を外す”と一言残して去っていった。

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