扇風機 ページ12
「１回頭冷やしな」
突然降った雨で髪がびしょ濡れで
そんな中私を見つめるその目は冷たい目だった
ずっとこうちゃんのことを嫌ってたくせに
指輪を貰っても嬉しくなかったのに
どうして今はこんなにもこうちゃんが愛おしくて寂しくて涙が出るんだろう。
電気もつけずにただ扇風機の音が聞こえる中私は一日中涙を流し続けた
ｶﾞﾁｬ､ｶﾞﾁｬ。
朝方、私はこうちゃんと確信したわけじゃないのに玄関へ走ってドアが開いた瞬間抱きついた
「っわ」
｢··ごめんなさい」
ねぇこうちゃん。こうちゃんは私にまだチャンスくれる？
「俺Aに裏切られたのに、Aのこと放っておけなくなって無意識にこの家戻ってきてた、ほんとバカだね俺」
｢…」
改めてこうちゃんが居る家が私の居場所なんだと思えた
｢行ってらっしゃい〜」
「行ってきまーす」
それから毎日今までよりお互いを思いあい意識もしあった
2人の安定した生活がこれからも続くように節約もし二人で500円玉貯金というものを始め
「集まるかなー」
｢集まる、、はず、、」
そして私もやっと就職活動を始めた
けれどなかなか上手くは行かず
｢落ち、た」
「大丈夫、こっから！」
｢また落ちゃった」
「次次！！」
｢…落、ちた」
「じゃあこれで全部？まぁ…でも最悪家賃とか稼げたらいいんじゃない」
｢うん、」
「あ、あと食費とネット代も交通費も」
1度でいいから、「Aは一生俺が守るよ」とか「家賃ぐらい払うよ」とか言われてみたかった
あれから5ヶ月が経ち最近はお互いを思いあったり意識しあったりすることもなくなってきて。
こうちゃんごめん、今日部長から飲み誘われたから帰んの遅くなるわー
あーあ今日せっかくカレー作ったのに。
明日じゃ今日の美味しさなくなっちゃうのにな
そう思いつつヤダとか言えないし私は我慢してLINEを返した
はーい、楽しんできてね
1人でカレーを食べてもバラエティを見ても美味しくないし面白くない。
ガチッ、ガチッ。
こんなタイミングで扇風機も寿命を切った
｢もう、」
私は部屋の暑さに耐えられず
1人であの公園まで散歩することにした
半袖短パンで暗い夜道を歩いてると
「Aちゃん？｣
｢えっ···「会いたかった」
私は今きっと夢を見ていなければ濱くんに
抱きしめられているはずだ
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作者名：(^^) | 作成日時：2023年2月11日 0時
