第35話 ページ40
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お昼を食べ終えても次の試合開始時間の13時半には30分以上あったので、少し外に出て気持ちを落ち着かせることにした。
試合が終わってすぐ、たくさんの選手の泣き顔が目に映った。
常波高校の池尻さんたちだけじゃない。
ここに来た人達の半分は、もう試合はできないんだから。
3年生の中には、春高まで残らずここで引退っていう人達もいる。
そんな中を突き進まなくてはならない。
なのに、相手は鉄壁を誇る強豪校。
昨日私は2年に向かって、「信じてる」なんて言葉を使ったけれど……
信じることって、どうしてこんなにも難しいのだろう。
烏野のみんなを疑っているわけじゃない。
弱いなんて思ったこともない。
だけど、……。
「おう、木下じゃねーか」
『…っあ、え、岩泉さん!こんにちは!』
「また凄い顔してたぞお前。何かあったか?」
回り始めたお得意の負のループを断ち切ってくれたのは、中学の時の先輩の岩泉さんだった。手には今買ったであろうスポーツ飲料が握られている。
何の目的もなく歩いていたら、どうやらいつの間にか自販機の近くまで来ていたらしい。
『あ、いや…』
「なんだ、言えねえことなのか?」
『そういうわけでは…。
……次の試合、伊達工となんですけど。
うちのエースは去年の春高で徹底的にブロックされて、それでちょっと、トラウマみたいになってるみたいで…。今回もそうなってしまわないか、って。
みんなに私、信じてるって言ったのに…いざってときに信じきれてない自分が情けなくて…』
2回戦を勝ち上がったら恐らく対戦するであろう相手にこんなこと話していいのか、なんて思うけど、一度開いた口は止まらなかった。中学の時はよく岩泉さんに相談に乗ってもらってたりしたから、なんだか懐かしい気もするし。
「…1回戦、同じポジションとして見ててすげえって思った。
迷いのない渾身のスパイクは、エースの名に恥じない立派なモンだった。
まあ色々あったんだろうが、それを振り切ってあの場に立ってんだ。じゃなきゃあんなスパイクは打てねえ。
だから、なんだ。
そっちのエースが何思ってるかは知らねえけど、
俺だったら、ごちゃごちゃ考えてないで真っすぐ俺達を見ろ、って思うぜ」
岩泉さんの曇りのない真っ直ぐな目に射られ、自分が考えていたことの愚かさに気付いた。
…そうだ。
仲間なんだから、よそ見なんてしてる場合じゃない。
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ふぃる(プロフ) - あかねさん» コメントありがとうございます!なんて嬉しいお言葉…!!のんびり更新ですが、これからもどうかよろしくお願いいたします(^^) (2020年3月12日 13時) (レス) id: 57a4697fd9 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - めっちゃ好きです。このお話読んでふぃるさんのファンになりました笑これからも応援してます!! (2020年3月2日 8時) (レス) id: 012863f737 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふぃる | 作成日時:2020年2月7日 11時