サイレントセンセーション【ＨＱ】

番外編「旭さんが部活を休んだ日」 ページ13

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伊達工業に負けて、帰ってきた体育館。
旭さんと西谷が掴み合いの喧嘩をしたと聞いた。

その時は既に私は帰路についていたため、その話を聞いたのは次の日。
学校に着いたら、苦しそうな表情で縁下が教えてくれた。


そしてその日の放課後、旭さんは部活に来なかった。


だから部内の空気は重苦しくて、西谷はずっと荒れていた。






練習終了後、すぐに外へ飛び出した西谷を追いかけると、水道場で頭から水を被っていた。
いくら練習後とは言え、この時期じゃあまだ寒いだろうに。

はあ、と溜息をついた彼にタオルを投げつけた。



「…A」

『風邪ひく。…旭さんのことは、』

「…あの根性無し…逃げやがった!!!」

『エースのこと、そんな風に言ったらだめ』



そう言うと、何も喋らなくなった。
プレー以外でこいつがこんなに静かだと、調子狂うんだけど。

怒っているような口調だったけど、涙が出ていないのが不思議なくらい辛そうな顔をしていた。



『昨日のことは、縁下から聞いた。

西谷は強いよ。あれだけフォロー頑張ったのに、まだ満足せず自分を責めることができる。
でもきっと、あの時の旭さんにはそんな西谷を見ているのが苦しかったんだと思う。

…旭さんがあんなこと本心で言うわけないから、だから、』

「……わかってる」

『うん。今日来なかったのも、絶対、嫌になっちゃったからじゃない。
ただちょっと、気まずいだけなんだよ。

分かる、なんて簡単には言えないけど、旭さんの気持ちに共感できる。

ただのマネージャーだけど、私も旭さんに部活にいてほしい。スパイク決めてほしい。
西谷が繋いで、スガさんが上げたトスを、打ち切ってほしい』





私はただのマネージャーで、潔子さんみたいに色々持ってるわけじゃない。
何をやったところで、全部無駄なのかもしれない。

それでも、みんなで笑ってるところが見たいから、



『私もがんばってみるよ、西谷。

旭さんが自分を、みんなを信じて、スパイクが打てるように。



元通りになるように』


「…おう……!!」






そう、西谷と約束したから。

西谷が自宅謹慎、部活停止になっても

優しい旭さんに追い返されて辛くても


今日も、がんばるから。

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