紫爛花

黄色の恋敵 ページ11

「お前は俺と一緒に帰りたいんじゃないと？」


ハンガーに引っ掛けてたパーカーを取りながら
何で、ちょっとそんな悲しそうな顔で言うの。
いつもみたいにいたずらな、悪い顔で言えばいいじゃん。

どうしてあの時そう思ったか分からない。
でも今も、少しでもふぉいと一緒にいたいって思う。


「一緒に帰りたい...です」

「そこまで言うなら一緒に帰ってやらんこともない」

「調子乗んな！」


またいたずらな最大級の笑顔で見られる。
さっきのわざとらしい悲しい顔も作戦だったんか。


「お前は酒強いからな。」

「ふぉいは、最初のワイン一杯しか飲んでなかったからね。」


だから、タクシー乗らずにふぉいと2人で一緒に帰るの。
何もやましくないでしょ？


「それとも？Aさんは俺が少しだけ外にタクシー拾いに行ってくるだけで寂しいと？」

「さっきから調子いいな…」

「そりゃもう。好きな女と一緒に帰れるんやもん」


夜中の外は寒いから、ふぉいが着るかと思った
パーカーを頭に雑にかけられる。


「わ…」

「すぐ戻るから いい子にして待っとって」


そう言ってパーカー越しに人の頭を
くしゃくしゃにして個室から出ていった。



「なんなんもう...」


着てみると黒いパーカーはブカブカで
めちゃめちゃいい匂いがする。
私の髪にまでふぉいの香水の匂いがした。
って何やっとるん私、ばり変態やん。


見渡しても青色と赤色と金髪と緑色は死んどるし
ここにおらん銀太は今トイレでゲロパーしてるかも。

ふぉいがタクシー捕まえて戻ってくる前に
今のうちに会計を済ませとこう。
個室を出て入口付近のレジに向かうことにした



「お会計○万円になります〜」

「カードで…領収書ください。」


何とも言えない気持ちで会計を済ませた時だった。


「いらっしゃいませ〜」

「すみません、迎えです。」


何故か、声が心地良い鼓動とは違う。
鳩尾に響くような嫌な鼓動がする。


「もしかして、Aさんですか？」

「はい？」


なんで私の名前を知ってるんだろうと思ったけど
わたしも、分かってしまった。
3ヶ月前、脇がみんなに見せた写真の彼女だったから。


「迎えの連絡が来て...将人...います？」

「脇の彼女さん。すみません、こんな夜遅くに。
酔い潰れてるので、すぐ呼んできます。」

「こちらこそご迷惑をおかけしてしまいすみません。よろしくお願いします。」



私上手く話せとった？顔に出てない？

実際、会ってみると本当に
いつか脇が語っていたような女の子だった。

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