紫爛花

黄色と紫色 ページ2

｢じゃあ俺が耐えられんかったけんかね｣


その言葉の意味を知るのはもう少し先のこと
今はまだ分からなくて、意味を問おうとすると
机に置きっぱなしの脇のスマホが鳴った


｢将人、今日の夜何食べる？早く帰ってきてー。｣

彼女からのLINEがホーム画面に浮かび上がった
もう、こんなに見えるとこに忘れていかないでよ
思わず、急に光ったから見ちゃった私も悪いけど。

気づいたふぉいが電源を消した。


｢すまん…｣

｢なんで、ふぉいが謝るの？｣

｢辛そうな顔、見てられんから。｣


事の始まりは3ヶ月前 。｢俺彼女できた〜！｣と
幸せそうに皆に見せた瞬間を、思い出しても辛い。

女の黒い感情がちゃんと私にもあって
自覚する度に自己嫌悪を繰り返す


｢ちょ、泣くけんやめてよ｣

｢泣くけんこうしとっちゃん。｣

｢服に涙つくばい...｣

｢そんなのどうでもいい。誰も見とらん、俺しか見とらん。
泣きたい時に泣かんと死ぬぜ？｣

｢こんなんで死ぬわけない…｣


ふぉいに何言っても、離してくれんくて
でも、この温もりで安心してる自分が理解できた。


「辛い。」

「分かってる。」

「幸せそうな脇の顔見るのが...っ」

「そりゃ、お前にとって辛すぎるわ。」

「苦しい...」

「よしよし、Aは頑張っとーよ。」


私のこの気持ちは、ふぉいしか知らない。
突然「お前、脇のこと好きなの？」と言われた。

そういえば、紫色のコイツは誰よりも鋭かった


それからはずっとふぉいが話を聞いてくれた。
ふぉいといると、何故か自分を出せて安心したから。


安心も束の間、廊下で銀太と脇の話し声が聞こえてきて
段々二人の特徴的なバカ笑い声が大きくなり
この部屋に二人が戻ってくることを知らせる。



｢ふぉいー社長そんなこと言っとらんかっ･･･｣

｢お、お取り込み中すいませんｗｗ｣


銀太もいるせいで、余計ややこしくなりました。
隣にはこの泣き顔を、今一番見られたくない人がいる。
腕の中のまま顔をあげられない。ふぉい、助けて。


｢ふぉいがAに手出しとー！｣

｢ふぉい、どういうこと？｣

｢…A、熱あるみたいなんだわ。｣

｢え？マジ？｣

｢体調悪そうだったから、休ませてただけ。｣


ほら、さっきも顔真っ赤やったっちゃん？
嘘をベラベラ思いつくのに、さっきの出来事との繋げ方が
上手くて、この世渡りの上手さに心底感心する



｢脇、何を勘違いしとーと？自分の女でも無いのに。｣

｢･･･｣

｢じゃ、俺A連れて帰る。社長によろしくな｣


脇に顔を見せないように
ふぉいに手を引かれ、銀脇を部屋に残し
そのままスタジオを後にした。

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