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二十九話 ページ30

普段走らないから走り方が絶対におかしいと思う。


あと半分…視界が歪む。


絶対にバトンは届けたい。


人影に近付いてきたけど、誰が誰だかわからない。


…美味しそうな香り…キヨ君だ。


『キヨ…、君っ!』


息が苦しい。でも、これで届いた筈だ…。


頭に手の感触がある。


「頑張ったな」


その声で私は地面に崩れ落ちた。



・・・・・・


…保健室か。


勝てたのかな…。


「…あ、起きた!」


…キヨ君?


「やったな!お前が最後まで頑張ったから勝てたぞ!」


そっか…勝てたんだ…。


『…よかった。』


「え!おまっ…な…」


何を言ってるんだ?


「…何で泣いてんだよ!」


凄い焦ってる。

って…え。


『な、…え…』


だからキヨ君の顔がよく見えなかっ…そんなこと言ってる場合じゃない!


『泣いてない!!』


「涙でてんじゃん!」


『あ、汗だよ!!』


「そんなわけねぇだろ!!」


私は泣いているところを見られるのが嫌いだ。

…何か…。敗北感がある。


何とか隠せないものかと手で隠すが、バレているしあまり意味がない。


どうしたものかと考えていたら、視界が真っ白に。

キヨ君のタオルだろうか。


「使ってないから…。…何か俺が泣かせたみてぇじゃん…」


そのタオルは何故か暖かく感じた。

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作者名:璃音哀 | 作成日時:2017年3月21日 13時

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