乱歩さんが不憫すぎる件について

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与謝野さんから話を一通り聞いた後、僕はAの待つ家に帰った




家に入ると卵の匂いが漂っていた




初めの出だしは良かったんじゃないかな




でも、何これ？




「謝りたい？」




『う、うん』




目の前のAの表情は強ばっていて、せっかくのオムライスの味が台無しって感じ……




謝りたいこととは恐らく昨日のことだろう、間違いない




僕が好きなものばかりが並んだ食卓、Aの態度、探偵社での国木田への対応、タイミング、お風呂に入っていないこと




それを考えれば誰にだってわかることだ




考えなくたってわかる、なんたって僕は”異能力者”だから




何も答えない僕に何かを感じたのか、Aは話始める




『正直ね、乱歩くんがどうして怒ってるのかわかんないよ……。でも、私っ、そういうの分かっていけるように頑張るから…』




「”そういうの”って、なに？」




思わず聞いてしまった、しかも僕にしては鋭い感じで




まずい、そう思っても遅い




『え、えっと……。ごめんなさい……』




うつ向くAの目には涙が浮かんでいた




違う、僕はAにそんな顔をしてほしいんじゃない！




一刻も早く誤解を解かなければならない




『じゃ、じゃあ教えて……？』




「え？」




『何が良くて、何が悪いのか、教えて…？』




思わず言葉を失い、あんぐりと口を開けてしまった




きっとスプーンからはご飯がこぼれ落ちているだろう




『乱歩くん……？』




「それって、どういう意味なわけ」




意味はわかってる、わかってるんだ




でも聞かずにはいられないだろ、普通は！




『ほら、乱歩くんに対してやっちゃダメなこととか…。私、覚える！』




「いや、いいんだけどさ……」




『うん？』




うん？、じゃないから




まだ言わせるつもりなわけ？




……気がつくと、Aを押し倒していた




『っへ？』




ものすごく間抜けな声…、むかつく




何もわかっていない、僕が今までしてきたことに気づいていない声




「…本当に教えてほしい？」




「ま、待って。起きよう？お腹空いた」




知らないよ、そんなの




こんな状況でそんなこと考えてるんだ




「へえ、これでよくそんなこと言えるね。…これは？」




『っ！？』




Aの肩が大きく揺れる




それもそうだろう、今のAと僕の顔の距離は大体1センチほど




それを意識して喋らないと直ぐにでも触れてしまうような距離

11→←9

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• 恋愛運: ★★★☆☆
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中島敦

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