【遊戯王VRAINS】闇に紛れた月Ⅳ (ページ32)

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月夜百四十九夜目ページ32

「そして彼女はSOLの“Pandoraプロジェクト”の被験体にさせられて、“私”が産まれた」

いつの間にか、俺は先程まで居た空間ではない、新たな空間の椅子に座っていた
辺りを見渡すと、そこは一面真朱色の部屋。光源らしきものは何処にもないのに妙に明るく、天井と壁と床の境目はない。何処までも広がっているのか、と勘違いしそうなほどだ
そしてその部屋唯一のインテリアとして置かれた、小さなカフェテーブルに置かれたティーカップとティーポット、そしてまだ駒の置かれていないチェス盤
俺と向かい合って座っているその女……銀の長髪に、青いエプロンドレスを着た女は白のクイーンの駒を手にし、細かい所まで入り込んだ埃を筆で払っていた
それと同じ服装をしたアバターの名は、確か

「……レジー」

「やっほーPlaymaker。おひさ」

仮面が外されていることで見える黄緑色の瞳が、こちらを向いてキラキラと輝く

「リデルはどうした」

「どーもしてないよ。此処はLINK VRAINSでも、あの子のプライベート空間でもない。私のプライベート空間だからね。今頃ログアウトして、浅葱家から脱出してるんじゃない？私はあの子が逃げ出せるまでの時間稼ぎと、そのノートの回収要員だから」

読み終わったなら返してよね、それ。と細い腕が此方側に伸ばされる。まだじっくりと読んでおきたかったが、彼女の機嫌を損ねたくはなかったため、正直にノートを返した。

「お前は、一体何者なんだ」

「えー、なんだ。君って答えわからなかったらすぐに答えを要求するタイプなの？やだなー、そんなの全然面白くないじゃん！せっかくヒントまであげたのに！謎解き厨とか考察厨とかだったらちょっと考えればわかると思うんだけどなぁー」

そう言ってプクー、と頬を膨らませるレジー。それに対して【あれ可愛いと思ってやってんのかね、だとしたら相当イタいって奴だぜ】と言ったのはAiだ

「ま、いーや。前に情報開示してからだいぶ時間たっちゃってるからねー。忘れちゃってもしゃーないしゃーない。

それじゃあ、改めまして。

私達は“Pandora”。人類に火を与えた男を罰するために神々から贈られてきた、見目は麗しくても、悪い心を持つ悪女。好奇心で世界に災厄を振り撒いた魔女。それが私達。それ以上でも、それ以下でもない。」