月夜 八十夜目 ページ49
ハッ、と気づけば私はいつの間にかログアウトしていて、自室の椅子に座っていた。
｢……帰ってきた……の？｣
椅子から立ち上がりたかった、けれど何時消費してしまったのか、そんな体力は体に残っていないらしく、腕に必死で力を入れて立ち上がろうとするも、上手くいかずに椅子から滑り落ちた。
｢いったぁ……｣
{{あ、マスター!!大丈夫!?}}
右方向からアテナの声がするが、顔をそちらに向ける程の力は残っておらず、目だけ動かす
「ア……テナ？」
何故かぼんやりとする視界の中、アテナの綺麗な今様の瞳だけがはっきりと見える。二つの今様の瞳が此方にずいっ、と近づいて
{{その様子だと動くのも難しそうだね……分かった。一寸待ってて。ベッドまで運ぶよ}}
そう言うと、目の前のぼんやりとしたアテナと思われる輪郭がほどけ、また新しい輪郭が結ばれる。それは私を軽々と抱き上げると、ベッドだろうベージュ色の布の上に私を降ろした。
クッションを頭の下に敷いてもらい、タオルケットを体に掛けてもらう。
「……葵ちゃんは？ハノイはどうなったの？」
「今、LINK VRAINSに潜ったエリカ達が情報収集中だよ。私達、マスターがレジーに突き落とされてから、ずっと真っ暗な空間に閉じ込められてて……何があったのか、私達にもまだ分からないんだ。ログアウトできたのも、何でか分からない。気づいたらログアウトしていた」
そう、と小さく呟く。
……私は、今の今まで一体何を考えていたのだろうか。
悪夢を見た記憶はある。
果てしない闇に飲み込まれる、訳の分からない夢。
「……誰だったんだろう、あの声の主。」
何故か、何処かで聞いた声のように感じる
急激な眠気が襲ってきた。ダメだ、寝てはいけない。今寝たら、葵ちゃんを助けられない、と心の中で自分が叫ぶが、強い眠気には勝てなかった。
「マスター、大丈夫だよ。葵ちゃんは、助かるよ」
意識がなくなるその瞬間、私はアテナの柔らかく暖かい声を聞いた。
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さくら - 面白いです。更新頑張ってください (2018年9月15日 18時) (
レス) id: 078b8d6a67 (このIDを非表示/違反報告)
あい - この物語は面白くて続きが早く見たいです。 (2017年10月25日 15時) (レス) id: cf9e98bb45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠伊亞 | 作成日時：2017年9月12日 17時
