夢ならば

もう【side:Hiroya.S】 ページ31

今日もまた足は病院へと赴く

冷えピタを貼った小さな女の子とお母さん
ギプスをつけた高校生くらいの男の子
機会とともに歩くご老人

いつも通りの病院の中に異彩を放つ、あの人


本能が、話しかけるな、見つかるな、と頭の中で叫んでいる
Aが望まないことはしたくないんだろ？、と本能が理性を嘲った


見つからないことだけを一心に願って、真後ろを通りAの病室へ急いだ


｢やっほー、A｣
｢今日も来たよ｣

見慣れた光景に声をかける
今日も昨日と変わってなくて安心感を覚えた


｢さっきまでインベスターZの取材しててさ、懐かしい人に会ったよ｣
｢天野さん
懐かしくね？｣

簡易テーブルに無造作に置かれた百人一首
角がよれてるものが多くて、懐かしさに包まれた
1枚手に取ると、かるたにしては硬く丈夫な手触りも懐かしさがこみ上げるには十分だった

｢撮影楽しかったよな｣
｢めっちゃAと試合したよな｣
｢弥榮だから、って絶対取らせてくんなくてさ、結局全部抜かれて｣
｢またかるたしよーな｣

時間は無情で、すぐに別れの時間

｢また明日｣

そっとドアを閉じて病院を出る


俺はうっかりあの人のことを忘れていたんだ

真実は【Hiroya.S】→←諦めるなんて【side:Mackenyu.A】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す