夢ならば

ストーカー ページ17

帝一の撮影を終え時計の短針がてっぺんを超えた頃


マンションの郵便受けを確認すれば真っ赤な封筒
いつも通り、分厚い

帝一の撮影が始まる少し前から毎日のようにこれが入っている




最初はTwitterに上がっているような写真や
"愛してる"
"お前に何かあったら俺はどうすればいい"
等、ドラマで言われた愛のセリフが一つだけ書かれたカードが入っているだけだった

少しずつ写真が増え、
次第に盗撮が増え、
カードが便箋に変わり、
どこかで盗聴までされる始末だ

内容がどんどん濃くなっていく

怖くて、誰にも言えない



家に入ると何となく違和感


何となく、ゴミ箱の位置が違うとか
リモコンの位置が違うとか、その程度

疲れている、気の所為だ、と思い込んでも寝れる気分では到底ない


ゲリラで深夜に申し訳ないとは思ったがインスタライブでもやらないと生きてられない

スマホスタンドをにスマホをセットして配信ボタンを押す


｢こんばんは、遅くにごめんなさいね｣


@- 寝ようと思ったらいきなり通知来てびっくりした
@- やほ！
@mackenyu.1116 珍しいね
@- こんばんは
@- すっぴん？
@- まっけんいた！？

もうすぐ1時だというのにたくさんのコメントが流れる
｢気にしないで寝てねー、明日も平日で朝早い人は沢山いると思うし
すっぴんじゃないよ！帝一の撮影終わりだから華のままだよー
役も役だから確かにすっぴんに見えるかもね｣

へらっと笑いながらコメントに合わせてペラペラ喋る

@- 誰かいるの？
@- うしろに誰か写ったね
@- だーすー？

｢え？誰もいな、い｣


後ろを振り向くと知らない男
手には赤い封筒


まさか、
家に入られていたとは思わなかった


家に入った時からの違和感の正体をようやく理解する
だけど理解するのももう遅い

『わざわざライブ開いてくれるなんて思わなかったよ、A』
『僕らの結婚報告をするためでしょう？』
『さあ、ここに名前を書いて』
『僕からのサプライズだ』

男の手には婚姻届
私の署名欄以外全て埋まっていて

｢誰……｣


恐怖でうまく動かない口でようやく言えたのはどうにもならない、わかりきった質問だった

『誰だなんて！そんなの酷いなあ』
『毎日手紙を渡していたじゃないか』
『僕がいつもそばにいることを分かってもらうための写真や』
『愛の言葉を添えて』

｢す、とーかー、｣

途切れ途切れになって口をついた言葉は相手を逆上させるのに十分だった

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