虎の虎元くん！ (ページ10)

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虎、吠えるページ10

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@Giants_fan
俺、巨人ファンだけど阪神の虎元は応援してる。他球団ファンでも知っている人多いと思うけどデビューが主人公補正かかってた。

【スタンドからの試合風景の動画】

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とある日の試合。3対3のまま、延長戦にもつれ込んでいた。1回が終わる事に、緊張感が増していく。スタンドでは鳴り物が禁止され、笛と手拍子だけで応援歌が響き渡っていた。

12回の表。ここで1点取らなければ、勝ちは無くなる。シーズン終盤、勝ちひとつが順位を揺さぶってくる時期。なんとしてでも勝ちたい。

それでも、ルーキーである自分に出来ることはベンチから声を出すことだけだった。ベンチの最前列に腰掛け、1球投げ込まれる度に、バッターに聞こえるように叫ぶ。

「虎元」

誰かに呼ばれて振り返ると、ちょいちょいっと手招きをする監督。近くに行くと耳元で囁かれた。

「代打で出すから」

『えっ、僕ですか？』

こんな場面、僕に任すよりもっと適任な人がいるはずだ。

そう言いたくなるのをこらえる。
じっと監督を見つめると、ニコッと笑う。

「高卒ルーキーで、こんな経験するやつ滅多におらんから、後々自慢できるように行ってこい。大牙やったらできる。ほら、はよせんと自分の番くるで」

ばんっと背中を押されて、流されるままにネクストへ向かう。さっきから心臓が鳴り止まない。素振りする腕にも力が入らない。まさに夢心地だった。

【代打、虎元。虎元大牙】

自分の名前が響き渡る。逃げ出したい気持ちを抑え、震える足で打席にたった。

ワンアウト2塁。返せば1点、ホームラン打てば2点。深呼吸して、ぎゅっとバットを握りしめ、ピッチャーを睨みつけた。

【さぁ、両軍負けられない試合。阪神は虎元を出してきました。これは、いかがでしょうか】

【そうですね、まぁ、打たなくていいから経験として、行ってこいみたいな感じだとは思うんですけど、本人からしたら心臓バクバクですよね】

【1球目投げました、おっと！この打球は！………弾丸ライナー！ホームラン！】

【うわぁ、すご】

【低く飛んだ球は落ちることなくスタンドへ一直線！打った虎元は吠えました！】

高く入った球を弾き返すとそのままスタンドへと入った。信じられず、思わず大きな声を出してしまう。

今思えば、ここからが僕のプロ野球人生が始まりだと言えるだろう。

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