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「入学式の日、桜の木の下で会ったの覚えてる?」


「…はい」



さっきの苦笑いとは程遠く、
懐かしそうに笑う先輩の表情は穏やかだった。



「あの時も、振られた彼女と付き合っててさ」



胸がズキズキ痛む。涙で先輩が歪んでしまう。
何が懐かしく思えるのか、不安で返事すらできない。



「それでも、俺は君を好きになっちやったんだよ」


「え、私…ですか?」



頷く先輩にいつの間にか涙が止まっていた。

驚きと、疑い。
半信半疑で先輩の話を聞く。


「最初、桜を見たくて行ったの」

「そしたら校舎を眺める君が凄い綺麗で」

「見てたら、目が合ったんだよね…わかる?」



それは、私が先輩に惹かれた瞬間。
先輩の目に吸い込まれる錯覚に
心が鷲掴みにされたんだ。


先輩も同じタイミングで私を好きに?



「信じられません、そんな話」


「俺、彼女に振られたんじゃなく、振ったんだ」


「…嘘です」


「本当。好きな子がいるって…」

「見守ってあげたくなるくらい一生懸命な子がいるって」



「ね、信じてよ…」



すがりつくような瞳は黒く濡れていて、
私はまた、先輩の目に吸い込まれた。



「信じます、信じますよ」

「先輩好きな私にそんな話したら…」

「こうなるんですからね!」



強引に手を掴んで、ぎゅっと握って。
これ以上ないくらいの笑顔。



「それだけ?……あ、いや、今のなし」


照れたように片手で顔隠す先輩が可愛くて
今度は私から頭を撫でた。



「付き合って下さい、一ノ瀬先輩」


「こちらこそ」



.



俺の頭を撫でる手は小さくて、
慣れないギターで傷んでいた。


妹がいる癖とか先輩がいた方が良いとか
彼女がいるのにそんな口実で近くにいてごめん。



「歌と同じくらいちゃんと、大切にするから」


「歌と同じ!?嬉しいです!」



入学式の日、桜が満開で良かった。
君を見つけられて良かった。


まだ、夢みたいだけど。
ただ、心を奪われたんだ。
名前も知らなかった、Aに。



***

遅れてすみません
思うように書けず、悩んでいました

わかったとは思いますが、一話の最初は
主人公視点ではありません。



ちなみに、
前作の最後は別れの桜、今回は出会いの桜です。

似たものどうし ky→←桜花 srr


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設定タグ:短編集   
作品ジャンル:恋愛
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雪乃 空(プロフ) - 美羽さん» 前作に引き続き、ありがとうございます!続編を出せたのは美羽さん方のおかげです〜 返信、公開、遅れてしまい申し訳ありません。ご希望通り、そらるさんにしたいと思います! (2019年3月17日 23時) (レス) id: bbddf0ce1d (このIDを非表示/違反報告)
美羽(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも読ませていただきます!!(ちなみに今日公開予定のもの、私はそらるさんが良いかな〜って思います) (2019年3月17日 14時) (レス) id: cc175e3c82 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪乃 空 | 作成日時:2019年3月16日 23時

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