五十二、現場 ページ8
*
____その日の午後。
わたしと崎見さんは、進まない捜査をどうにかするために、再び現場を訪れていた。
茶番劇を演じるための一人目の被疑者……つまり特務課からの回し者が、証拠不十分で不起訴になって暫く経ってからも、
現場にはまだ市警や軍警の人間が沢山居た。
そろそろ引き上げる時期かもな、と思っていたのだが、法務省からの圧力だけでなく、
国からのお達しがあれば、これだけの人員をこれに割き続けるんだな、と思う。
背景が特殊だから仕方ないことなんだけど。
人数の分だけの仕事が捗っていればいいんだが、と苦笑が零れてくるというものだ。
「刑事さん」
「ああ、あんたか、検事さん」
崎見さんと同じ年頃の、現場の指揮官である刑事さんに声をかける。
……よく考えてみれば会うのは久々だ。治と国木田さんと一緒に現場に居合わせた時以来か。あ、いや、それからも何度か会ってるか。
「捜査状況はどうですか?」
「どうも何も、知っての通りですよ……何も出てこないから、そっちに誰も送れてないんだ。
……そもそも異能犯罪を、我々市警が仕切ってやるということがまた変だ」
「……ええ、確かに」
異能殺人ということは既に知れていることなので、軍警も勿論捜査に関わってきているが。
所謂軍警のタスクフォースのような部隊である“猟犬”は出動していない……きっと国にも何か思惑があるのだ。
治や森さんでも、一筋縄ではいかないこの事件。国も【匣】の何かを知って、利益を得ようとしている____。
「……失礼だが、変だといえば、変なのは検察庁の人選だな」
「え?」
「検事さんのことを貶めるつもりは無い、だがあんたはまだ二十歳。普通なら検事になる歳ですらない、大学すら卒業していない歳だ。
こんな若手、と言うより新人と云ってもいいあんたに、こんな国が関わるような大きな仕事を任せるというのは変な話だな」
「……!」
確かにそうだ。
その通りだ、失礼だなんてとんでもない。これはただの事実だ。
……じゃあ、わたしの人選にも、何かの思惑が絡んでいたのだろうか。
それは矢張り、わたしがポートマフィアと関係があるから? ……それとも本当に両親が【匣】と関係していたから?
……いずれにせよ、中原さんの連絡を待つしかないのかもしれない。
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さにー☆彡(プロフ) - りささん» 互いの『最優先』を尊重する、あるいはこの2作の内容全てといったところでしょうか…(文法に違和感を覚えるのはそういうものとして御海容下さいませ…) (2021年5月18日 11時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 最後のところの『それ』って何なんでしょうか? (2020年5月18日 16時) (レス) id: 486a37f744 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!!設定や中身まで楽しんで頂けたようで何よりです!! (2019年7月31日 18時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 設定、話の内容、文才、全てが素晴らしくて、読んでいてとても楽しかったです。作品様すばらしいです…!!ありがとうございました。 (2019年7月31日 17時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆずみかんさん» ありがとうございます……!!主人公がやばくてすみません……!こいつ大丈夫かと何度も思われたことでしょう申し訳ない← こちらこそこの作品を最後まで読んでくださりありがとうございました!!コメントすごく嬉しかったです…! (2019年6月6日 8時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sunny | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年9月7日 14時