終章 ページ32
「え、結婚はしない？」
「暫くね」
……わたしは、検察官のバッジをスーツにつけ直しながら、その問いにあっさりと答えた。
秋霜烈日バッジ。それは正義を表す象徴。
「ええー、なんでだい？ 漸く許嫁になったわけだし、早くやってしまおうよ」
ね、と背後で治が微笑む気配がする。
ったく冗談じゃない。こちとら長年片想い拗らせてたせいで、両想い発覚しただけで未だ動揺してるってのに。
とはいえ、そもそも此奴と両想いになったからって、具体的に何が変わったのかと聞かれても、今まで通りも甚だしい。
異能連続殺人が犯人失踪で解決……というより迷宮入りしてから、治のスキンシップは目に見えて減った。まあ当然だが。
あれは治がわたしを止めるためにやってたことだし。
「……それで満足してどっか行っちゃいそうだからね、お前は」
……まあ当然、心の持ちようは変わったけれど。
“お父さん”の“お節介”のために、確かにわたしは自分の『最優先』をほぼ叶えたと云えるだろう。
自分の心に気がついた彼はわたしを求め、わたしは少しは彼と対等になれたわけだ。
＿＿＿＿が。
やはり治の『最優先』は未だ変わっていない。
「……可愛いこと云うね。どこにも行かないよ、君に何も云わずには。そういう約束だろう？」
「報告すれば死んでいいって思ってんでしょ」
「……そんなことはないよ？」
「せめて目を合わせろ」
まあそれは治の『最優先』だから仕方がないし、わたしの『最優先』は治の『最優先』になることではないので、まあ、別にいいけど。
けど彼女としては、あんまり彼氏が死ぬことばっか考えてるっていうのはあんまり嬉しくないというか。
「それについては変えられないからねぇ」
「判ってる。ってか心読まないで？」
「顔に出てるから。……ねぇ、“お詫びは
「いいわけあるかあほか」
ほんと、何云ってんだ此奴は。
そうやって盛大に溜息をついたその時、強く腕を引かれて、わたしは治の腕の中に収まる。
「何、」
「……なんだったら、Aがわたしの心中相手になってくれてもいいんだよ？」
目を見開いた。
弾かれたように振り返ろうとも、がっちりと抱き締められているためにそれは出来なかった。
……ああでも、そうか。もう、わたしは、『それ』に望まれてもよくなったのか。
それは大きな“進歩”だ。
「気が向いたらね？」
それが、わたしたちの“レンアイ”のかたち。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 449人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さにー☆彡(プロフ) - りささん» 互いの『最優先』を尊重する、あるいはこの２作の内容全てといったところでしょうか…(文法に違和感を覚えるのはそういうものとして御海容下さいませ…) (2021年5月18日 11時) (
レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 最後のところの『それ』って何なんでしょうか？ (2020年5月18日 16時) (レス) id: 486a37f744 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます！！設定や中身まで楽しんで頂けたようで何よりです！！ (2019年7月31日 18時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 設定、話の内容、文才、全てが素晴らしくて、読んでいてとても楽しかったです。作品様すばらしいです…！！ありがとうございました。 (2019年7月31日 17時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆずみかんさん» ありがとうございます……！！主人公がやばくてすみません……！こいつ大丈夫かと何度も思われたことでしょう申し訳ない← こちらこそこの作品を最後まで読んでくださりありがとうございました！！コメントすごく嬉しかったです…！ (2019年6月6日 8時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sunny
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時：2018年9月7日 14時
