六十二、助けて ページ18
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お母さんは確かにポートマフィアの顧問弁護士だったが、研究に関わっていたわけではない、ようなそんな気がする。
……わたしが知る限りでも、彼女はオンオフのけじめがきっちりつけられる人だった。
それと同様に、仕事にも、介入するべきところとする必要はないところは分けていただろう……それも今となっては確信は持てない訳だが。
だが、少なくとも関わっていなかったのだとしたら、お母さんは殺される必要はなかった。
【匣】の研究を狙っている人が犯人だったとしたらの話だが____。
「……お父さんと、お母さんは、銃殺、だったんだっけ」
それは昨日、中原くんが電話でくれたソースだ。
凶器は血にまみれた灰色の銃……恐らく七年前のあの時、わたしはそれを実際に『見た』のだ。
忘れているだけで……だって、何度も脳裏によみがえるくらいだ。相当わたしとも因縁が深い筈。
疑問はいくつも残る。
如何して__これは仮定ではあるが_”研究に携わっていないお母さんまで殺されなければならなかったのか。
そして如何して、偽装工作__心中事件に見せかけようとしたのか。そして、その犯人は誰なのか。
お父さんが心中を図ったのだとずっと思っていたし資料もそうなっていたが、今となっては本当にそうなのか定かではない。
「……っ、」
____不意に。
頭の中に、パァン!! という破裂音が轟いたかと思うと、激しい頭痛に襲われた。
あまりの痛みにその場に頭を抱えて蹲り、呻き声を漏らす。
断続的に、脳裏によみがえってくる光景。あとからあとから、まるで水が湧き出てくるように。
____向かい合う両親。
____お父さんの哄笑。
____血に塗れた灰色の銃。
____甲高い破裂音。
____わたしの頬に飛び散る鮮血。
「い、やだ……!!」
何か、開けてはいけない扉のノブに手をかけているかのようだ。頭が痛い。
床をのたうち回りながら、わたしはぎゅっと目を瞑る____そうだ、あの時、意識を失いながらも、わたしは治に助けを求めたんだ。
助けて、と。助けて治、と。
____わたしは、とんでもないことをしでかした。
____まるで、開けてはいけないものを開けてしまった、パンドラという娘のように。
____このまま、君より先に死ぬべきだ。
____ごめんね、治。ごめんね。
____ああ、でも、怖い。逝くなら、君と一緒がいい。
助けて、治。
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さにー☆彡(プロフ) - りささん» 互いの『最優先』を尊重する、あるいはこの2作の内容全てといったところでしょうか…(文法に違和感を覚えるのはそういうものとして御海容下さいませ…) (2021年5月18日 11時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 最後のところの『それ』って何なんでしょうか? (2020年5月18日 16時) (レス) id: 486a37f744 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!!設定や中身まで楽しんで頂けたようで何よりです!! (2019年7月31日 18時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 設定、話の内容、文才、全てが素晴らしくて、読んでいてとても楽しかったです。作品様すばらしいです…!!ありがとうございました。 (2019年7月31日 17時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆずみかんさん» ありがとうございます……!!主人公がやばくてすみません……!こいつ大丈夫かと何度も思われたことでしょう申し訳ない← こちらこそこの作品を最後まで読んでくださりありがとうございました!!コメントすごく嬉しかったです…! (2019年6月6日 8時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sunny | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年9月7日 14時