五十五、銃殺 ページ11
「……矢っ張り、そうでしたか……」
『……手前、判ってたのか』
ええ、と頷いてスマホを強く握り締めた。
ただ、それはあくまで予想だったのであって……実際にその可能性が高いと云われて、平静でいられるわけじゃない。
「……じゃあ、わたしの両親は、いったい何で死んだんですか?」
一酸化炭素中毒でないというのなら、その原因はいったいなんだ?
……治がこの事件と【匣】を隠したがっていた理由が判りかけてきた。
彼奴は昔から、一家心中未遂事件の話をわたしの前ですることを避けていた。
それはわたしを気遣ってでもあって……何かを隠す為でもあったのだろう。そして今になって、【匣】は表舞台に立った。
電話口の向こうで、息を吸い込む音がした。
スマホを握る手に力を込める。
『……銃だ』
「……銃?」
知らぬ間に、冷や汗が背中を流れる。
鼓動が早まり、息が荒くなる。
……中原くんは相変わらずかたい声で、『ああ』と云った。
『凶器の写真はないが、死体の情報は見れた。母親にも父親にも弾痕があり、どちらも即死ではないが致命傷だった』
「……っ、」
『太宰がお前を現場から救い出した時に、何かが行われたか、何かを知った可能性があるな。
下手人は外部犯か、それとも【匣】の残党か』
銃。……銃?
がたがたと全身が震え、脳髄が恐怖を訴える。
『変わりたくないのなら知らない方がいい』と云った江戸川さんの声が脳裏に蘇った。
パッ、と。
鈍色の光を伴って瞼の裏に浮かんだ映像は、
……血に濡れた、灰色の銃。
「っ、ひ、」
『……おい、A? 大丈夫か?』
「……だ、大丈夫……大丈夫です」
『何かあったのか? 声が引き攣ってるが』
心配げな声。……わたしは大きく息を吸うと、笑顔を作った。
彼に見えないのはわかってるけど、そうでもしないと、自分でも意味がわからないこの動揺が、おさまらないと思ったから。
「平気です、中原くん。……ありがとうございました、わざわざ。大変だったでしょ?」
『そりゃ、まァな。……でもこれで太宰の鼻をあかせるなら悪くねぇ、手前も無理すんなよ』
「判ってます。ほんと助かりました、何か判ったら中原さんにも教えますからね」
『おう。じゃあな』
笑みを含んだ声を返され、通話が終わる。
ほっとした途端に疲労が肩にのしかかって、わたしはそのままベッドに倒れ込んだ。
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さにー☆彡(プロフ) - りささん» 互いの『最優先』を尊重する、あるいはこの2作の内容全てといったところでしょうか…(文法に違和感を覚えるのはそういうものとして御海容下さいませ…) (2021年5月18日 11時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 最後のところの『それ』って何なんでしょうか? (2020年5月18日 16時) (レス) id: 486a37f744 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!!設定や中身まで楽しんで頂けたようで何よりです!! (2019年7月31日 18時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 設定、話の内容、文才、全てが素晴らしくて、読んでいてとても楽しかったです。作品様すばらしいです…!!ありがとうございました。 (2019年7月31日 17時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆずみかんさん» ありがとうございます……!!主人公がやばくてすみません……!こいつ大丈夫かと何度も思われたことでしょう申し訳ない← こちらこそこの作品を最後まで読んでくださりありがとうございました!!コメントすごく嬉しかったです…! (2019年6月6日 8時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sunny | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年9月7日 14時