三十三、今でも少し思い出せる ページ36
＿＿＿＿え？
……一瞬、息が、止まる。
何をされたのか認識出来ず、ただわたしは柔らかな感触の残る自分の唇に指先で触れた。
今、いったい、わたしに何が＿＿＿＿
「A」
「っ、」
「誰よりも大切な私の幼なじみ。君は……知らなくていい。私が隠していることを、知ろうとしなくていい。
……知っては、“いけない”。きっと傷つくから」
“こんな事”よりも……きっとずっと傷つく、と云うと。
治はつい今先刻自らのそれで塞いだばかりの、わたしの唇を、親指ですっと撫でた。
……数瞬遅れて、わたしは悔しさと羞恥……それから僅かな恐怖に、慌てて治から距離をとる。
「治、今……いったい何して」
「私は君が“その真実”を知ることを許すことは出来ない。……もし君が、七年前のことを恩に感じているというのなら＿＿＿＿」
声が低められ、空気が凍てつく。彼がポートマフィアにいた時のような、粘つく闇が辺りを支配する。
……地雷原。今自分が居る場所を正確に理解したわたしは、青ざめて硬直した。
「＿＿＿＿これ以上、この件に関わるのはやめ給え」
＊
＿＿＿＿七年前の、真実、か。
まだ感触が残っている唇を指で何度もゴシゴシと擦りながら、わたしは自分のデスクで書類と睨めっこを続けている。
……あのあと、流石に顔を見合わせるのはキツいものがあった＿＿要はあまりのアウトオブ眼中さに悔しくて泣きそうになった＿＿ので、
今日もわたしにしては異常な程に早起きして地検に出勤してきてしまった。
勿論昨日は泊まっていった(当然何も無かった)治を置いてけぼりにして。
……乙女の純情を弄んだ罰だ、なんて。当然云えるわけがないけど。
「はぁ……」
それにしても、被疑者……つまり特務課の使者からも情報を得ているが、……治が隠したいのはいったいなんのことなんだろう。
……わたしが傷つく、というのが治の理屈。多分そこには嘘はない。
だとしたら何のことなのか。……矢っ張り、七年前の事件で、わたしが傷つくときたら、両親のことだろうか。
「……っ」
今でも朧気にだが思い出せる。
わたしを守るように抱えていたというお母さんと、……そして少し遠くの場所に倒れていたというお父さん。
葬儀の時、近所の人が噂をしているのが耳に入ったのだ。どうやって彼らが死んでいたのか。
治が傍にいてくれていなかったら、わたしはきっと壊れていただろう。
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さにー☆彡(プロフ) - やっさんさん» やばいです← 私の文スト作品は大体やばいです← 続編もよろしくお願いします← (2019年2月27日 22時) (
レス) id: 632d3b069c (このIDを非表示/違反報告)
やっさん - 最初から、一気に読みました。最初は、爆笑ラブラブ？展開のはずが、なんかとってもヤバそうな話に滝汗。引き続き、続編を読んでみます汗。 (2019年2月27日 22時) (携帯から) (レス) id: 6ef490f023 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 彼方さん» テストが終わったのでもうすぐ作ります笑 (2018年9月6日 18時) (レス) id: 632d3b069c (このIDを非表示/違反報告)
彼方 - とっても面白いです。続篇まだですか？ (2018年9月6日 18時) (レス) id: 383b340c0d (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - はちさん» ありがとうございます！！ もうすぐ続篇も書きますので、よろしくお願いします！ (2018年8月27日 21時) (レス) id: 632d3b069c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さにー☆彡
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時：2018年5月5日 19時
