二十四、七年前の心中未遂 ページ25
＿＿＿＿七年前。
吸い込んだ息が、締まった喉のせいでひゅっという音を立てた。
治の低められた声の意味が少しだけ理解出来た気がして、わたしは強く拳を握り締める。
「……このことについてはあまり君に話したくない。他の誰でもない、君のために……判っているだろう？」
「判って……るけど。でも、如何して今頃、七年前の事件なんて……」
あの時の恐怖が足下からせり上がってきて、わたしは意図せず小刻みに震えた。
……七年前。わたしは治に助けてもらわなければ、死んでいた。
あの時、彼は絶好の自 殺機会を棒に振ってまで、わたしの命を助けてくれた。
まだ気に病むことがあって、その時のことについて治は調べるのをやめていないみたいだけど。
「＿＿＿＿一家三人心中未遂事件。
七年前、君はそれで両親を失い……君だけが生き残った」
懺悔するように呟かれた声に、わたしは身体を強ばらせた。
両親のどちらが心中をはかったのか、今となってはもうわからない。
ただ一つ確かなのは、父か母、どちらかが企んだ心中に気がついた治が家に飛び込んできて、わたしを連れ出してくれなければ、
わたしは今ここにはいなかった。
＿＿＿＿あの時なら、きっと治は死ねたのだ。
練炭の一酸化炭素によって気を失っているわたしを抱き締めて、そのまま目を閉じていれば、治はきっと死ねた。
でもそれをしなかったのは、ひとえにわたしが彼にとって、生かすべき幼なじみだったから。
「おばさんたちを救えなかった。まだそれが悔やまれるよ。
……でもそれだけじゃない、きっとあの事件にはまだ裏があるんだ。
【匣】や今回の異能暗殺者、それらが七年前と関わっているかもしれないことについては君に詳しくは話せない。君を傷つけたくない」
私にとって君は、何より優先して守るべき幼なじみだからだ。
……それはどこまでも真剣な声音だった。だが、それを聞いてわたしは、嬉しさを感じると同時に惨めにもなる。
今の言葉は、治がわたしを対等な存在として見てくれていない証拠だからだ。
守るべき存在だと云われるのは、自分より弱いと云われているようなもの。
……わたしは、いつまでたっても、此奴の隣には並べない。
「被疑者は不起訴、それで捜査を終わらせるんだ。あのことは私に任せて」
頼むから。
その意志を言葉の端に乗せて、治は愕然として動けないままでいるわたしを、そっと抱き締めた。
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さにー☆彡(プロフ) - やっさんさん» やばいです← 私の文スト作品は大体やばいです← 続編もよろしくお願いします← (2019年2月27日 22時) (
レス) id: 632d3b069c (このIDを非表示/違反報告)
やっさん - 最初から、一気に読みました。最初は、爆笑ラブラブ？展開のはずが、なんかとってもヤバそうな話に滝汗。引き続き、続編を読んでみます汗。 (2019年2月27日 22時) (携帯から) (レス) id: 6ef490f023 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 彼方さん» テストが終わったのでもうすぐ作ります笑 (2018年9月6日 18時) (レス) id: 632d3b069c (このIDを非表示/違反報告)
彼方 - とっても面白いです。続篇まだですか？ (2018年9月6日 18時) (レス) id: 383b340c0d (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - はちさん» ありがとうございます！！ もうすぐ続篇も書きますので、よろしくお願いします！ (2018年8月27日 21時) (レス) id: 632d3b069c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さにー☆彡
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時：2018年5月5日 19時
