彼女の決意 ページ46
＿＿＿＿自 殺は大罪だと思い知らされたのは、“目を覚ましてみて”からだった。
一瞬で途切れる視界も、硝煙の臭いも、わたしは確かに感じた筈なのに、
何故か目は開き、わたしの視界には新しい景色が映った。
「初めまして、私があなたのお母さんよ。もう、ちょっと、泣かないでよ」
「いや、だって無事に生まれてきてくれたから嬉しくなって」
「Aちゃんのお父さんは泣き虫さんでちゅねー」
それはきっと、初めて子供を授かった夫婦の、何よりも幸福な一場面。
だがそれは、孤独なまま死を選び、世界に別れを告げたわたしを絶望に突き落とすものだった。
折角わたしはあそこで死んだのに、如何してまた生が続くの？
わたしはこれからずっと、お兄ちゃんのいない世界で生きなければならないの？
生まれてきたくなどなかった。ここには本当の母も家族もいるのに、わたしだけが“
(ああ、そうか……これは罰なんだ)
自分が住んでいる町が横浜で、ポートマフィアという犯罪組織があって、
この世界に異能というものがあって……自分にもそれがあると理解した時、罰が与えられたのだと知った。
お兄ちゃんが助けてくれた命を自ら捨てた、大罪。
死を望んだ者に、新たな生を与えるなんて絶望を、罰と言わずして何と言うのか。
(ここは……お兄ちゃんが好きだった小説の、漫画の世界)
わたしはその話をよく知らなかったけれど、ストーリーの一部だけは聞いていた。
……だから、奇しくもかつて命を落とした14歳で、両親を事故で失った際の身の振り方にも、何ら迷うことはなかった。
この世界で生きることが罰ならば、わたしはそれを受け入れる。
そして自死を選んだ、愚かなかつての自分に復讐をしようと決めたのだ。
方法は簡単。
正義を何よりも愛し、人を虐げることを何よりも憎んだ誰よりも大切な義兄が、
わたしを見て嫌うようなところへ行けばいい。
これでわたしは、“わたし”への復讐を完成させられる。
わたしは、幸せを選ばない。この地獄で復讐を全て終え、暴虐を尽くしたその時に、きっとわたしは救われる。
「小娘。ポートマフィアで、お前はいったい何が出来る？」
「わたしは生も死も拒みません。ただ、組織へ最大級の忠誠を捧げましょう」
「よかろう、気に入った。小娘、名は」
わたしは笑った。
笑って、答えた。
「徳田Aと申します」
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やっさん - さにー☆彡さん» 後書きの羊の宰相、リンク、スタートになってますけど笑。徳田さんの、転生前の本名は、謎のままでしたか... (2019年8月10日 9時) (
レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - くどはるさん» ありがとうございます……！！そう言って頂けてとても光栄です！太宰さんは妖艶でないとだめですよね笑ちゃんと書けていたでしょうか笑…続きではありませんが、後書きにある作品がこれにリンクしたものとなっています。ご興味あればぜひどうぞ！ (2019年7月23日 7時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる - こんなに読み込んだ作品は初めてです…作者様の言葉の卓越さや文章の造りに心底惹かれました！！一つの小説として、何度でも読みたくなってしまいます！太宰さん最高に妖艶です。続きを期待してしまいますが、また新しい小説楽しみに待ってます！素敵なお噺ありがとう！ (2019年7月23日 1時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 涼風梓さん» なかなかに長い話でしたが最後までお付き合いくださってありがとうございます！！楽しんでいただけてよかったです！ (2019年6月6日 15時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
涼風梓(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!面白くて一気見しちゃいましたw今更かも知れませんが完結おめでとうございます! (2019年6月6日 15時) (レス) id: b666f93d0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さにー☆彡
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時：2018年3月24日 21時
