だから、終止符を打つ 四 ページ44
____目を覚ますと、そこは白い
空は曇天で、日はまだ低い。暗くはないので午前なのだろうが、わたしが意識を失ったのはもう夕方過ぎだったはず。ということは夜は越えてしまったのか。
なら、あれからどれくらい経ったんだろう? ……彼の拷問はどうなった?
わたしは真っ青になって慌てて体を起こすと、辺りを見回した。
「そんなに慌てて起きては、体に悪いよ」
「太宰幹部!」
手の怪我から菌が入り込んだのだろうね、と云って、彼は寝台のそばの椅子に腰掛ける。
無様に泣いてしまった時のことが脳裏に蘇りそうになるが、急いで振り払う。
今はそんな場合ではない、あの人にはまだ聞きたいことがあるんだから。拷問を終えていないのに、殺されてしまっては困る。
するとわたしの思考を読み取ったのか、「心配する事は無い」と太宰幹部が呟いた。
「まだ捕虜は生かしてあるよ。貴重な情報源だ」
「そう、ですか……あの、太宰幹部。倒れてしまって申し訳ございませんでした。
ですが、得た情報をお伝えしておきます。ミミックの長の名はアンドレ・ジイド。元軍人で、織田作さんと酷似した異能を保持して」
「知っているよ」
「……え?」
目を見張ると、彼は静かに「織田作が熱烈な求愛を受けてきたからね」と告げた。
額面通りの意味ではないだろう。顔から血の気が引いていき、脳内で警報が鳴り響いた。
……思い出すのは、お兄ちゃんのお気に入りだった本の話。
「それに今日、詳細は云えないけれども一つ重要な会談がある。ミミックの件とも深く関わる事だよ」
____嗚呼。
ああ、ああ、ああ。矢張り、矢張りそうか。
もうあれから数日が経っているのか。わたしの気絶は予定調和か。
わたしは“歴史の改変”なんて、望んでなかった。望んでなかったが、最初から手の施しようなんてなかったのか。
今日
全ては決まっていたことだ。わたしは確かにそう、太宰幹部に告げた。
でもまだ……まだ、足掻くことくらいは。
「あなたに、あなたにさえ会わなければ、わたしは最後まで無関係で居られたのに」
「Aさん?」
「……洋食屋」
わたしは顔を上げて、太宰幹部を睨みつけた。
「洋食屋です。早く行って下さい、手遅れになる前に」
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やっさん - さにー☆彡さん» 後書きの羊の宰相、リンク、スタートになってますけど笑。徳田さんの、転生前の本名は、謎のままでしたか... (2019年8月10日 9時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - くどはるさん» ありがとうございます……!!そう言って頂けてとても光栄です!太宰さんは妖艶でないとだめですよね笑ちゃんと書けていたでしょうか笑…続きではありませんが、後書きにある作品がこれにリンクしたものとなっています。ご興味あればぜひどうぞ! (2019年7月23日 7時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる - こんなに読み込んだ作品は初めてです…作者様の言葉の卓越さや文章の造りに心底惹かれました!!一つの小説として、何度でも読みたくなってしまいます!太宰さん最高に妖艶です。続きを期待してしまいますが、また新しい小説楽しみに待ってます!素敵なお噺ありがとう! (2019年7月23日 1時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 涼風梓さん» なかなかに長い話でしたが最後までお付き合いくださってありがとうございます!!楽しんでいただけてよかったです! (2019年6月6日 15時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
涼風梓(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!面白くて一気見しちゃいましたw今更かも知れませんが完結おめでとうございます! (2019年6月6日 15時) (レス) id: b666f93d0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さにー☆彡 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年3月24日 21時