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死柄木side
深夜過ぎ。大分遅くなってしまったとバーの扉を開けた。
がらんとした誰もいないバーの奥から、
微かな光が漏れている。
「…A」
何となく彼女の名前を呼びながら、足早に中へ入る。
薄暗い部屋のベッドの上に、彼女はいた。
白い肌がくっきりと映える。
もう一度、彼女の名前を呼ぶ。
どうしたの、と優しい声が鼓膜を震わせた。
やっと、ゆっくり過ごせる実感が湧き、
死柄木はベッドの上に乗る。
ぎし、と軋んだ音がした。
死柄木の性急さを感じ取り、彼女が声を上げた。
「ま、まだおふろはいってない」
「帰ってきてすぐ入っただろ」
「それが、さっき…」
少し慌てている彼女に迫った。
なんでだめなの、と問おうとして、言葉に詰まる。
シャワーを浴びたはずの彼女足に、砂が付いている。
腕も夜風に当たったかのように冷たい。
つい先程まで、外に居たのではないかと感じる程には。
「とむらくんの先生と会ったの」
彼女が言い出した言葉に、驚いて顔を上げた。
もう彼女のことが伝わったのか。
否、今日は大きく動き過ぎた。
伝わっていても可笑しくは無い。
「お話したの」
「なんて、」
「いろいろ…？」
何故か疑問形で、彼女は微笑みながら言った。
「個性の汎用性が高いから知識を付けろって教えられて。
それで、プレゼントって、あれを」
彼女が指差す先に、床に積み上げられた無数の本があった。
真新しいものから、黄ばんでいるもの。
人体図鑑から、小さな詩集まで。
「『君は今まで人に直接個性を向けることが無かったから
特に人体について学ぶといい。逃げるなり抵抗するなり
何かしらの役には立つだろう』って」
彼女はオール・フォー・ワンの口振りを真似て、
頬を紅潮させた。
「怖い人って思ったけど、私の希望に沿って教えてくれて、」
少し興奮気味に、一生懸命に話を伝えようとする彼女に
無意識に口元が緩んだ。
脳無にしたり殺すかもしれないと思っていたが、
案外先生は彼女を気に入ったのかもしれない。
それでね、と言う彼女は笑顔だ。
穏やかな時間。
彼女が話し、死柄木が頷き。
次第に死柄木も口を開く。
血生臭い話を避けて、彼女が喜ぶように。
先週見た可笑しな模様の猫の話。
黒霧が淹れたコーヒーの話。
彼女が喜ぶかもしれないと買った小さなケーキの話。
誰かの為に話をする経験が無くて、拙く言葉を繋げる。
それでも楽しそうに肩を揺らして笑うものだから。
その夜はあっという間に過ぎていった。
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maro(プロフ) - こういう弔くんの夢小説を探していたんです......!!!見事にどっぷりハマりました👍🏻 ̖́-︎続きを気長に待ってます！！ (4月12日 14時) (
レス) id: 89c84e5ca3 (このIDを非表示/違反報告)
もあ(プロフ) - すごい考えられた話で たまげました！とむとむのこうゆうお話あまり無いのですが、どストライクすぎて何回も読ませていただきました🥰お忙しいとは思いますが、続きを楽しみにしています！ (8月16日 20時) (レス) id: 595898a75e (このIDを非表示/違反報告)
ノア - わぁぁ！めちゃくちゃ続き気になります！！夢中で読んでしまいました！笑続き待ってます！ (2022年7月13日 14時) (レス) @page44 id: da656baae2 (このIDを非表示/違反報告)
Yo - 読んでめっちゃドキドキしてました！！ゆっくりでいいので続き楽しみにしています(^^)更新頑張ってください！ (2022年3月12日 23時) (レス) @page41 id: b7d6e0178a (このIDを非表示/違反報告)
華羅夢(プロフ) - えぬえさん» 返信遅れて申し訳ないです…🙇♀️ここまで至るに随分時間がかかってしまい…亀更新なのに読んでくださり感謝しかないです…！コメントは力の源…！頑張ります💪 (2022年1月1日 1時) (レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華羅夢 | 作成日時：2021年9月17日 10時
