第四話 きっと幸せじゃない ページ9
*
鬼を滅する彼らは良くいえばかっこいい。
悪く言えば、馬鹿だ。
鬼に勝てるはずがない。
鬼を倒して人助けなんて、頭が花畑。
私は、そんなかっこいい主人公のヒーローになりたいわけじゃない。
ただ、
殺したかった人のため、
大好きな人のため、
鬼を倒せる唯一の武器である日輪刀を手に入れたかっただけ。
_
『炎柱様。私は、自分のエゴでしか動きません。
貴方様のように、まっすぐで綺麗な人になりたかった』
_
「にいに、は、今日もいないの?」
「はい、最近忙しいようで」
「つまんないの」
にいには、最近遊んでくれなくなった。
理由は実に単純なもの。
いくら時間が経てど、彼女の血鬼術がとけずにいること。
それだけなら良いのだが、徐々に彼女から鬼の気配が強まりつつあること。
ゆえに、早く血鬼術を解く方法を探っているのだが、手がかりは今一つつかめずにいた。
「にーちゃ、お外、おそと!!」
鎹烏としばらく遊び相手になってもらっていたが、それも飽きてきたAは外に出たいと口を開いた。
こうなると、何が何でも外に出るまで駄々をこねるA。
そのことを知っているにーちゃ、基千寿郎は「すこしだけですからね」と彼女の手を引いた。
自身の屋敷をぐるぐる一回り、散歩がてらに歩くつもりだった。
「あ、くもさん」
数分後。彼女が昆虫に興味を示す。
続いて千寿郎も彼女の視線を追った。
道端にいたいっぴきの蜘蛛。
赤い斑点模様が特徴的な蜘蛛にどこか不安を覚えた千寿郎はAの腕を引き、「帰りましょう!!」と言う。
つられてAも千寿郎と共に走って玄関の方へ向かうが、
蜘蛛は逃がすまいと、凄いスピードで二人を追い、
あっという間にその距離ゼロセンチ。
初めに、千寿郎の肩に乗ってくる。
気持ちわるい感触を覚え、千寿郎は蜘蛛を手で払いのけるものの、
全くひるまずAの足をよじ登っていく。
「、いやっ、ぞわぞわする!!」
涙目で訴えかける少女。
「な、」
毒でも加えられたのか。
行動の制御がきかない。うまく体を動かせず、空気を身体に取り込むのが精いっぱいで、千寿郎は地に伏せてしまった。
何とか、Aでも。
そう思い、顔を上げた彼であったが、
「消え‥」
そこに女の子の姿はなかった。
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←・
87人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪 - 続き楽しみにしてます(●´▽`●) (2021年10月1日 8時) (レス) id: ed2686deb5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:灯り | 作成日時:2021年6月6日 19時