第2話 迷子の五歳児 ページ2
*
「う…」
その日は雨が降っていた。
ただ、目が覚めたら頭が痛くて、
「生きたい」と思う気持ちでいっぱいで、
「死にたくない」と願うばかりで、
ただただ、誰かを恨んでいた…ような気がする。
大っ嫌いなそいつの名をつぶやきながら歩いていたような、
でも私の小さな声は雨によって消されていく。
同時に記憶もあいまいだった。
ぼんやりと覚えているのはあたたかな愛情だけ。
それが誰から向けられたのかはわからない。
「助けて…だれか、救って」
私の声は誰にも届かない、と思ってた。
「こどもが倒れています!!!!」
私のすぐそばで声がした。
そして誰かに抱えられる。
雨で冷え切った体が、目の前の人の体温で温まられていくことがわかる。
「鬼に襲われたのか!無事か」
「あったか…い」
「君は…」
「あったかいや」
なにかを思い出せそうで何もわからない。
それが悔しくて、
私は、ぎゅっと目の前の男の体に抱き着いた。
「独りで辛かったな、すぐに治療する」
頭を撫でられる。
とても安心する手で触れられたことで
気が緩み眠くなる。
「死んでも、かまわないよ」
狭まる視界と遠くなる意識の中で言った。
死んだって、あなたのせいじゃない。
それに私は自分でもわかるほどの致命傷。
助かるはずない。
「死なせない、」
その言葉を最後に、
意識はプツリと切れた。
*
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雪 - 続き楽しみにしてます(●´▽`●) (2021年10月1日 8時) (レス) id: ed2686deb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯り | 作成日時:2021年6月6日 19時