元カレとの動画がバズりました【宮侑】

# 角名倫太郎という男 ページ6

「 面白いよね、侑と苗木って 」


「 ハイ……？ 」


あまり接点のないクラスメイトに元カレとペアで面白いと言われた時、私はどういうリアクションをとるべきなのだろうか。


「 ナンデヤネン… 」


少なくとも、私の反応は至って普通だったと思う。
それなのに自身の横に腰掛けるクラスメイトに楽しげに目を細められたのだから意味がわからなかった。


「 なんで関西弁？ 」


いや、それは私も思ったけれども。


「 角名から話しかけてくるの、珍しいなーって思って 」
「 ああ、無駄な会話はしたくないからね 」
「 い、今まで私が話しかけた時そんなふうに思ってたんか… 」
「 嘘だよ 」


さらりと吐かれた毒気のある言葉にグッと胸を抑えると、角名は笑う。って嘘かーーい

思わず華麗なツッコミを見せるも、あろうことか彼はガン無視を決め込んできた。許さない。
悔しがる私の様子を見る彼は心底ご満悦そうだ。


意外と笑うんだな、と失礼なことを思うと同時に意外と意地悪だぞ、とも感じる。


どちらにせよ午後のホームルームで行われた席替えで私と彼が隣になったことに変わりはない。


「 改めて、苗木Aです。よろしく！ 」



まあ、こういうのは形からっていうからね！

同じように自己紹介を求めつつ口を閉ざしたのに、直ぐには返事が返ってこなかった上、ようやく口を開いたかと思えば角名が発したのは「 え、今更？ 」の一言。


「 形式上の挨拶くらいさせてよ！」

「 角名倫太郎。バレー部でーす 」

「 ハイハイレスポンスありがとうこざいます！！ 」

「 苗木って怒ると敬語になるよね 」
「 別にそんなことありませんが！！？」


角名に翻弄されながら必死に声を張っていると、コツンと頭に衝撃が走った。
私の頭を叩いたばかりの学級日誌を掲げながら担任が呆れ顔を浮かべる。

「 苗木、うるさいでー 」と当たり前のように全部の罪が私に被せられていたので慌てて抗議した。


「 角名がいじめてきます 」

「 違います。いじめてくれって頼まれました 」

「 苗木…？ 」

「 誤解です！！！」


察したような笑顔をうかべた担任は「 ま、まあ人はみんな違ってみんないいって言うしな… 」とよく分からないフォローをしながら教卓へ戻って行く。

……消えてしまいたい。

肩を震わせながら笑いを押し殺す角名は既に私の中で少し意地悪の枠を大きく超していた。



「 意外と話しやすいんだね、苗木 」


「 沸きました… 」
「 お風呂が？ 」
「 殺意が 」

# 友達の定義→←_

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す