鏡の中のとも

五月の始まり ページ4

昔、この辺りに大きなスーパーが無い頃には、本当に便利でもっと沢山の人が買い物に来ていたけれど、今はそうでもない。

大きな音楽を響かせるスピーカーがうるさいと苦情を言う人もいて、騒音問題になっているらしい。騒音、とまではいかないけどAもこの音を聴くと否応なく、今が平日の昼だということを意識する

子供が笑う声が聞こえた。

平日午前中の11時というのが、こういう時間なんだということを、Aは学校を休むようになって初めて知った。

ミカワ青果の車は、Aにとって小学生の頃から、夏休みや冬休みに見かける物だった。

こんな風にカーテンを引いて、部屋で身を固くしてる平日に見るものではなかった。
去年までは。

Aは息を殺して音を絞ったテレビを見ながら、その灯りが外に漏れていなければいいな、と思う。

ミカワ青果が来なくても、Aの部屋の向こうに見える公園には、いつもの近所の若いお母さん達が、子供を遊ばせに来ている。

色とりどりのバックをハンドルのとこにかけたベビーカーがベンチのそばに並んでいるのを見ると、『あぁ、午前中も後ちょっとだ。』と思う。

10時から11時ぐらいにかけて集まり始めた親子達は、12時ぐらいにはお昼ご飯の為に、みんな一旦そこからいなくなる。

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