＿＿ ページ14
＿＿
『おぉ!普通にすごい……』
DDR部部長。
今まで練習してきた甲斐があったと思った。
その証拠にAちゃんは僕に見とれて……はいなかったけど感心はしていた。
「カッコよかった?」
『ゲーセンで軍団3人がプロの動きでこれやってたら笑っちゃうなとは思ったかな』
「もしかして馬鹿にしてる?」
『褒めてる褒めてる。さすが部長ってかんじやった』
じゃあいっか。
っていうか僕このデートでカッコいいとこ全然見せられてへんやん。映画で号泣して逆ナンされて助けてもらってDDRしただけやん。
まぁかといってこれからカッコつけられる場面なんてほぼ無い。
UFOキャッチャーのぬいぐるみを欲しそうに見つめるとかいうベタな展開はAちゃんに限ってありえないし。今だってあそこのゲーム台でお菓子荒稼ぎしてるし。
……僕はそういう王道をいかない斜め上なところを好きになったんやけど。
『鬱』
「ん?どうしたん」
『あれ鬱に似てない?』
Aちゃんが指差した先には、青くて宇宙人のような触角を生やしたキャラクターのキーホルダー。
「僕あんなんなん?」
『イメージそんなかんじ』
だれがあんなUFOキャッチャーやんねん……って、あ。
もしかすると僕は天才かもしれない。
「……じゃああれ2個取ってお揃いにしよ」
『お、ええやん』
こういうとき彼氏を頼るという発想が彼女にはないらしく、一人で淡々と1体目をとっていた。対して僕はどうだろうか。
「うわあああああんAちゃん助けて取れへん……!!!!」
ここでもやはり彼女のカッコよさには負けてしまうようだ。
『ほい』
「ありがとぉ……」
明日からカバンにつけとくね、と言ったAちゃんは僕の腕を引いてまたお菓子の機械に向かって歩きだした。
割と僕は単純な奴だったみたいで、2人でアホみたいに爆笑しながら遊んでいると悩んでいたこと自体忘れてしまった。
ただしいつまでたっても思い出さないようなバカでもないみたいで、別れのときにはネガティブな感情ばかりが僕を支配していた。
『めっちゃ楽しかったわ。ありがとうね』と彼女は綺麗に笑うけど、ほんとはこんなに情けない姿を見せる予定ではなかったのだ。
『え、どうしたん?』
もちろん、こんなふうにどんな感情が原因なのかも分からない涙を流して目の前の彼女を困らせる予定でもなかった。
ほんとに、彼女といると想定外のことが多すぎて困る。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 148人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：算数にがて作者 | 作成日時：2020年8月15日 12時
