参拾伍 ページ36
……………… 大人気なかったかな。
つい、頭に血が上りすぎてしまった。
今更だが、手が痛い。
……………… こんな手を、義勇が見たらどんな顔をするだろうか。
俺が嘴平に斬られた時みたいに、青ざめた表情をするのだろうか。
……………… まあいい。熾勇に痛みが残っても面倒だし、治しておくか。
俺は、器用に【虚無】の発動を怪我をした部分だけ、解除する。
そうすれば、結局は鬼の身体。再生力は桁違いだ。
みるみる傷が塞がり、跡すら残らなくなった。
……………… はっ、宛ら化け物だな。
まあ、鬼なんて時点で化け物に変わりないか。
とにかく、一度冨岡邸に戻って、熾勇との入れ替わりを待つか。
そう思いながら、俺は足早に蝶屋敷から出ていった。
*******
冨岡邸の熾勇の自室へと向かい、そこに大の字に寝転ぶ。
………… そう言えば義勇、目を覚ましたって言ってたな。
下手に身体を動かせば悪化するだろうし、暫く休んだって誰も文句を言わないだろう。
それにしても、失敗してしまったな。
もうこの姿では胡蝶しのぶの信頼は得られないだろう。
まぁ、別に必要ないことなんだがな。
この世界で、この身体を使っているのは【熾勇】だ。
俺は、ただのオマケ。
この世を呪って死を望んだ時点で、俺の生きる価値なんて失われている。
なんだって、ひとつの身体に【二つの魂】を宿すことになってしまったんだか。
俺は、全部を熾勇にあげたいんだけどな。
そんなどうでもいいことを考えていると、意識が段々と遠のいていくのが分かる。
ようやく時間切れか。
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作者名:アルビリオン | 作成日時:2020年4月17日 10時