面白い予感 ページ10
〜A side〜
ミニットメンだった私が判事になってから
TVAに保管されている多くのフィルムを見てきた
変異体達の人生を記録したフィルムは
彼らが変異体にならずに正しく神聖時間軸を歩んだ場合の
亡くなる瞬間までの全てが記録されている
変異体になって、リセットされてしまった彼らにも
生きてきた時間があって、歩むべき未来があった
それぞれの人生、それぞれのフィルム
それは、まるで映画のようで
娯楽のないこのTVA局内での、唯一の私の楽しみだった
タイムキーパーに作られた私たちTVA職員には
そういった、いわゆる “ 人生 ” は手に入れられない
もしかしたら私は、人生を歩める彼らに憧れを抱いているのかもしれない
お気に入りのフィルムはいくつかあるが
一番はダントツで、ロキ・ラウフェイソン
複雑な人生に、意外性ばかりの展開
何度このフィルムを見ても飽きない
こんなことを言っては元も子もないが
やはり美形は何回見てもいいものだ
信号無視をしたせいで変異体になった
俳優の男の裁判を受け持った時は
つい、無罪にして逃がしたい衝動に駆られた
「判事？判事！！A判事！！」
『なに？あ、あぁ、悪いわね
次の審理へ移りましょう、被告人を入室させて』
いけない、ぼーっとしてしまった
またラヴォーナに、気が抜けすぎだと起こられてしまう
被告人を入室させるために扉を開けると
資料を片手に、駆け足でどこかへ向かうメビウスがチラリと見えた、何か面白い予感がする
急いでこの審理を終わらせよう
『貴方は、えーっと、なに？
ヴァナヘイムの貴重な遺跡の一部を盗もうとしたのね
まったく、、、有罪よ、剪定して』
こうしてはいられない、すぐにメビウスを追わなきゃ
私は席を立ち、早足で法廷から出た
「ちょ、判事！次の審理があります！！
どこへ行くんですか！！」
『残りの審理はノックス判事に回して！
私は用事が、、じゃなくて、腹痛なの、じゃっ！』
「お待ちください！判事！！」
私は部下の声を無視して、２つ隣のラヴォーナの法廷に入室した、メビウスはラヴォーナの部下だから多分ここだろう
傍聴席に、白髪混じりの後ろ姿が見えた
当たりだ
メビウスもかっこいいよなぁ
ブルーグレーの瞳も、口髭もセクシーだ
さて、何をそんなに急いで見にきたのか、、、
あの被告人の後ろ姿、見覚えがある気がする
黒くて少しクセのある髪に、特徴的な話し方、声
ロキ、ラウフェイソンか！！
、
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作者名：ゆゆり | 作成日時：2023年10月7日 23時
