7年目はじっこアイドル

19 HS ページ22

WW「winc、一番最後にやるんだ」


これは大チャンスだ、そう思った。




さっきの楽曲披露で観客のwincに対してのイメージはとても良かっただろう。

特にこのAコンに合わせて衣装を変えたのが良かった。



隣の席の後輩のナムジャグループの話し声が聞こえる。





「あの青色の衣装の子がかわいかったな」

「思った、ピンクと黄色の子もかわいかったけど」

「俺…青色の子の連絡先聞きに行こうかな…」

「あの子、真面目そうだからちょっと言い寄れば行けるかも」






……。



俺は無言で振り返りそのグループを見る。

そいつらは俺に気付きお辞儀をする。


「「「こ、こんにちは！」」」



HS「こんにちは、


あのさ、



君らの声こっちまで聞こえてるよ」



ピシッ

俺の言葉に固まって動かないそいつら。




WZ「馬鹿お前！顔が完全にキレてるんだよ！


…うちのがすみませんでした。」



ウジはそう言って強制的に俺の顔をもとに戻してから俺の頭を叩いた。



HS「いって！！痛いよウジ！！」


WZ「お前はもっと周りを見て行動しろ！」



敵対心丸出しだ、


そう怒られた。



HS「だってあいつらが…」





俺が反論しようとしたその時、


wincがステージへ出てきた。







彼女らの本当のステージが始まる。


観客が期待してwincコールを始める。



スングァンも小さな声でwincコールを一緒に言う。




でも…



なんだか雰囲気がさっきと違う。




曲が始まった瞬間、


彼女らはバラバラに踊り始めた。
こんなヨジャグループ、俺は見た事がない。






セットした髪型が崩れようと、


衣装のスカートが乱れようと、



彼女たちは歌い、踊り続けた。







表現にすべての力を注いだこの曲は、


ひどくつらく、悲しい曲だった。




メンバー一人一人ががなったり、急にか細い声になったりして

曲の情景が想像できた。




皆はwincの空気に飲まれていた。





Aちゃんのソロパートだ。


"どうして行っちゃったの

信じていたんだよ

行かないで"



去年のAコンから覚醒した彼女の表現力。

それがこの一言の歌詞に詰め込まれていた。




本当に行かないで…

彼女は涙を流しながら歌っている。




そんな彼女の姿に心打たれたのか会場の人たちには悲しい顔をしている人たちもいる。




そして、


ウジの頬には涙が一筋。









彼女達は…wincは、



アイドルの概念を変えた。




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