平古場は本気 ページ25
今にも浸水しそうな程ボロボロのボートがふわりふわりと波に乗る。進めど進めど延々と続く水平線。私達は一体、今どこにいるんだろう。
「気持ち悪い……」
「ぬーばあ?船酔いどー?」
日傘を刺しながら嘔吐く私に知念君が顔を覗かせた。いやいや、
いやいや……
「完璧にストレス9割だよ!ここどこ!」
響き渡る私の声は波の音に飲み込まれる
「Aは初めてですからね」
謎に冷静な木手君
「生涯向かえなくていい初めてだね!うん!」
一体全体どうしてこうなった。
経緯を語れば単純明快、いつもは飛行機で帰っていた私を待ち受けたのは自力で帰れという顧問からの冷たい御達し。顔面蒼白の私を乗せた船は木手君達の操縦で南へと進んでいったのだった。
「くぬ旅はAがいるからでーじ楽しいサー」
「甲斐くんしっかり!楽しくないよ!これ遭難だよ!助けて跡部君!」
「何ですか、私達より跡部君を頼りにするつもりですか」
「そりゃそうだわ!金の力に物言わしてえわ!」
ぐったりと淵に項垂れる。なんだよこの旅。無謀過ぎるよ。潮風に当たりすぎて全身が錆びてしまいそうだ。
海面に写る自分の顔は引く程に血色が悪くてさらに驚いた。
「下を見ていたらもっと酔いますよ」
「うわーん!助けてー!」
しばらく叫んでいればふいに後ろから両肩を引かれそのまま仰向けに寝かされた。次に見えたのは視界いっぱいの青空と、心配そうな凛ちゃんの顔。
「わんじゃダメだば?」
どうやら過酷な旅でおかしくなった私を心配してくれた凛ちゃんは自分の胡座に私の頭を乗せ介抱しようとしてくれたらしい。凛ちゃんは潮風でギシギシになった私の髪を丁寧に撫でてくれる
……うん
「結婚しよう」
「いや可笑しいでしょ」
「木手君は黙って!」
キュンときた。これは娶る。危機的状況で頭が正常ではない私は木手君を押し退け凛ちゃんの手を取る。熱い眼差しを送れば凛ちゃんは笑顔で握り返してくれた
「やーとわんはお付き合いからやっし」
「じゃあ沖縄に着く頃には結婚だね」
「てーげー、やっさー」
ふふふ、と2人で冗談を言い合えば幾分か気持ちが楽になった気がした。
……少なくとも私は、冗談のつもりだった。
平古場は本気
「という9年前のやりとりが馴れ初めでしたね。新郎の平古場君、新婦のAさん、末永く、お幸せに」
《友人代表のスピーチ、木手永四郎さんありがとうございました》
「こんなことって……」
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光華(プロフ) - 逆からのやつ感動です!!柳君だからこそできることかな?神ですね! (2021年3月11日 21時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
Haruka Ö(プロフ) - 逆から読むのは凄すぎました!!! (2020年1月27日 23時) (レス) id: 0d992502c1 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 逆から読むのがわからないです…。理解力なくてすみません!!気になるので誰か教えてください! (2020年1月7日 13時) (レス) id: 2a82e997d1 (このIDを非表示/違反報告)
佐和(プロフ) - はじめまして。ろちこさんの作品にはまってます。がっくんのプロポーズ、笑いました。からあげwww逆ハ話も好きですが、誰か個人落ちの話をもっと読んでみたいです。更新頑張ってくださいm(._.)m (2019年8月18日 0時) (レス) id: 892b8d0726 (このIDを非表示/違反報告)
くろかは(プロフ) - ゼクシィじゃねーのが面白すぎたので日常会話で積極的に使っていこうと思います(^ω^) (2019年7月10日 19時) (レス) id: e34a9a5e9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろちこ | 作成日時:2018年4月17日 2時