白石の聖夜(3/3) ページ19
白石君はゆっくり、次をめくった
【
胸が、痛い。
【
【Merry Christmas】
穏やかになる顔を止めることは出来なかった。その告白は期待や下心の類ではなく、白石君自身のけじめだと察したから
「メリークリスマス」
そう返すと白石君は眉尻を下げて笑い、背中を向け去って行った。彼はどうしてこんなにも、優しいのだろう。気がつけば靴も履かずに、彼の背中を追いかけていた
×××
中学時代から想いを寄せていた子は俺の親友と結婚した。悲しくないと言えば嘘になるが、純粋に祝福したかったのも事実だ。
2人共俺にとって大切な存在やしな
諦める覚悟は昔から出来とった。そのせいで彼女には大変不快な思いをさせていたことだろう。何せ諦めると言うのは心の見切りではなく、彼女から距離を置くことで気持ちに蓋をしただけの簡素なものだったのだから
クリスマス、俺は正真正銘、自分にケジメをつけた。白石君てキザだよね。なんて昔言われたことを根に持ったようなパフォーマンス
And my wasted heart will love you
報われない僕の心は永遠に君のもの
自分で書いて悲しくなった。けれど今日はクリスマス。ちょっとぐらいはしゃいで余計なこと口走っても罰当たらんやろ？
「……これでいいんや」
ポツリと呟き空を見上げてもロマンチックなもんは何も見えんかった。けれど見上げていないと、この視界を曇らすものが零れて来そうで
「白石君！」
ふいに呼ばれた声に反射的に振り返る。誰が俺を呼んだのかは分かっていた
しかしそれを視認するより先にやって来た、柔らかく、温かい。唇への感触
目は勝手に見開かれた
俺から離れたAちゃんは何も言わずに、慈愛に満ちた目でにこりと笑い掛け、踵を返し去っていく。ありがとう。そんな想いがダイレクトで伝わって来た気がした
報われない想いは変わらない。けれどなんや……
「充分過ぎるわ……」
長年募らせた想いは無駄では無かったと、そんな勝手な満足感が俺の全身を駆け巡る
ほんま、ありがとう。Aちゃん
「お幸せにな」
こんなに素晴らしいクリスマスは今まであったであろうか。頬を涙でびしょびしょにしながら、俺は軽い足取りで、ただ夜道を歩き続けた
白石の聖夜
Aちゃん泣かせたら許さんで。謙也
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 303人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くろかは(プロフ) - 「大事そうな話」が特に好きです！いや全部面白いんですけどね！！(*ﾟ∀ﾟ*) (2019年3月9日 11時) (
レス) id: e34a9a5e9f (このIDを非表示/違反報告)
ろちこ(プロフ) - びょるさん» 繰り返し失礼致します、続編に載せる予定だった四天宝寺プロポーズネタを急遽こちらで載せることになりましたので、ご連絡失礼致します！リクエスト本当にありがとうございました！ (2018年4月17日 6時) (レス) id: 7838910af6 (このIDを非表示/違反報告)
ろちこ(プロフ) - ふゆさんはじめまして！全てのお話に目を通して頂きありがとうございます！！お褒めの言葉まで！白石君程に融通の利くキャラはいません！書きやすさに重宝させて頂いてます笑。本当にありがとうございます、嬉しすぎます。これからも何卒、宜しくお願い致します！ (2018年4月17日 2時) (レス) id: 7838910af6 (このIDを非表示/違反報告)
ろちこ(プロフ) - 信玄さん» 信玄さんはじめまして！コメントありがとうございます！私もめっちゃ嬉しいです！続編でも何卒宜しくお願い致します！ (2018年4月17日 2時) (レス) id: 7838910af6 (このIDを非表示/違反報告)
ろちこ(プロフ) - 涼音さん» 涼音さんありがとうございます(><)続編でも何卒宜しくお願い致します！会員登録までっっ！本当にありがとうございます！仲良くしてくださいっ！ (2018年4月17日 2時) (レス) id: 7838910af6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ろちこ | 作成日時：2018年3月6日 12時
