○ ページ7
.
ゾムの元気のいい返事を最後に再び拘束されたナニカを後目にショッピングモールを出る三人。もちろん向かうところは社員用の駐車場だ。
ゾンビを退けながら必死に走る鬱とルイと満面の笑みを浮かべながら何食わぬ顔でゾンビを排除するゾム。ルイは少し足取りの覚束無い鬱をみて、どうしたんだと鬱の足元をみると靴が片方脱げていることがわかった。
辺りは割れたガラスや石やひび割れたアスファルトが平気であるような場所だ。鬱の片足はきっと怪我だらけになっているだろう、それを証拠に彼の走ってきた道には片足分だけ血の足跡があった。ルイは思わずその痛さを想像し、顔を顰めてしまう。
「ぁっ、あった！社員用の駐車場！多分ここや！ここに車がある⋯⋯はずやねんけど、」
「ぉ〜っと、これはあったとしてもコレ乗れるのほぼないとちゃうん」
ルイが鬱の心配をしているといつの間にか、社員用の駐車場についた三人はその光景に思わずウゲッと言いたげな顔をして顔を顰めた。
フロントガラスの割れた車、何故かペシャンコの車、辛うじてマシな車もあるがそれらキーが持ってきたキーの中にあるとも限らないわけで
鬱が持ってきた遠隔操作型の車のキーをぽちぽち押してみるが反応するのは廃車同然の車ばかりで、その傍らでルイは寄ってくるゾンビの気を逸らそうと向こうの方に空き缶を投げたりと試行錯誤している。
「あ、あかんわこれ、どれもまともな車に反応せえへん」
しかし折角持ってきた車のキーは無駄足となったようだった。そんな、とルイと鬱は悲壮な顔をしている。
その後ろでぷはっ、と噴き出したゾムが「実はなー、おれ、車持ってきとぉで」とケラケラと嗤いながらそう言い放った。
その言葉に、ほんの一瞬、間が空いた。
「⋯⋯ッはぁっ！？ なんなんそれ、君舐めとんの？！死ぬか生きるかの狭間でなんでそんな重要なこと黙っとんねん。君は
「ちょっ、ちょちょ、待ってください。落ち着いてください鬱さん！！ ゾムさんに喧嘩売ってどうするんですか！ 大声もあんまり出さないで！」
シー！シー！と指を口に当てながら鬱を抑えるように抱き着くルイ、責めるような言葉を吐かれたゾムの顔からはすっかり表情が抜け落ちていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1663人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：臓臓臓 | 作成日時：2020年8月5日 10時
