○ 未来 ページ38
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呆然と目の前で起きたことを処理しきれていなかったエーミールが弾かれたように叫ぶ。
「映像と違う！ なんで、なんでや、ここで私は死ぬ筈なのに……！！ 未来は変えられへん！！ 何したんや君！ このままやと世界が帳尻合わせようとしてくる！」
「帳尻はもう終わってます。その子が死ぬだけで終わり、アンタは死なない」
は、？ と声を出したのはルイだった。見下ろせばみるみると女の子の体が冷たくなっていることに気がついて、じわじわと冷や汗をかきはじめる。
「うそ、うそうそ！！ まって、だめ、死んじゃだめ。私がまもるって、きめたのに！ なんで、さっきまでまだ普通に息をしてたのに」
「あの男の死ぬ運命をその子に回しただけです」
「なにいって、いやなんで、な、んでこんなこと……！ あの時助けるの手伝ってくれたじゃないですか！」
「……このときのためや」
どこか舌っ足らずな声で、ショッピはただ申し訳なさそういった。今までの男のように傲慢な態度で殺したならまだわかる、自分でしたくせに、手の手当てをしようと近付いてくる男は意味不明で、この場にいる誰もが何が起こっているのか理解出来ていなかった。
「ルイちゃん、こいつ頭おかしいんとちゃうか」
鬱が思わずそう言った。
ぎ、とどこか鋭くなるその目。銃を片手に近寄ったゾンビを撃ち抜いてからショッピはわなわなと震える。
「頭がおかしくないとルイさんの為にここまでしませんよ」
まるでそれは悲鳴のような訴えだった。傍らでは大きな爆発音と共に大量のゾンビが弾け飛んでいた。おそらくゾムが持っていた手榴弾だろう。
「ただアンタの役に立ちたかっただけです、その為なら何だってしました。チーノも、俺も」
焦燥しきったショッピは訴えかけるようにまた言葉を重ねる。そしてまたゾンビを撃ち殺す。
「……な、なにを言ってるンですか、」
「意味わからんことばっかいってルイちゃん困らせんといてよ」
ぎゅ、と冷たくなった女の子を抱きしめながら意味のわからない言葉を連ねるショッピを涙を流しながらみつめた。鬱も傍に寄り添うようにその肩を抱いている。
それをみてショッピは「……亡霊が、」と忌々しそうに呟いて、ふう……と自分を落ち着かせるようにため息をついた。
「俺は未来から来ました」
ゆっくりとルイの目を射抜くショッピ。
「ルイさんの為にここまで来たんです、アンタに頼まれたから」
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作者名：臓臓臓 | 作成日時：2020年8月5日 10時
