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「今から大体1分後、今まで見たこともないような大きさの“ナニカ”が暴れ出し、咆哮をあげます。その衝撃でゾンビ達が押し寄せ、この安全区域は一気に地獄と化しますから、頑張ってくださいね」
は、と息を飲むルイ。何もかもが無責任だと罵りそうにもなった。
「どうして……どうしてッ！ ここにいる人達を避難をさせたりしなかったんですか！」
「……変えられないものを変えようとしてもまた新しい犠牲がうまれるだけなんですよ」
つまらなさそうにエーミールは言った。もう何度も変えようとした未来が結局辻褄を合わせようと最終的にはもっと大きくなってしまうことをエーミールは知っていた。だから何もせず、ただ見据えるしかないのだ。
「……だからね、ルイさん」
早く無力な私を殺してください
その言葉と共に大きく景色が乱れ、気が付けば周りには居なくなっていたはずの鬱達がいた。鬱達も居なくなったルイがまた現れたことに驚くがそれよりも大きく振動する地面に咄嗟に身構える。もう既に1分が経とうとしていた。
「みなさん、今すぐ、今すぐ逃げてください！！」
弾くようなルイの叫びと共に現れたのは見たこともないような大きさの黒くどろどろとした、人が触れてはいけない禁忌のような“ナニカ”だった。
「……人が、人がどうこうできるモンちゃうやろアレは。なんでどこも……ナニカが襲ってくんねん……まるで安全区域を潰すみたいに……」
ロボロが空を見上げ、そう言った。サイレンが鳴り響く、ナニカは赤子が泣き叫ぶのと同じようにばたばたと暴れ回り咆哮をあげ続けた。
小さな少女は咆哮に怯えているのか、空を見上げ微動だにしない。ルイはその少女をそっと抱き上げる。
「大丈夫、行こう」
震えも恐怖も何もかも押さえ込んでしまえ、涙すらもとルイは覚悟を決める。
「はよ行かんと、ゾンビにのまれる！4番通路に俺の車がある。そこまでお前らついてこい。夜市の時みたいに武器は貸したるわ」
───
ロボロがそういってそれぞれの頭上に湧き出てきたのは様々な小銃だった。驚いてそれを片手で受け止めてはみるがルイは銃なんて使ったことはない、命を簡単に刈り取るその形はやたらとずっしりと重く感じてしまう。
そして、ナニカがまた1つ大きくあげた咆哮と共にルイ達は弾かれたように走り出した。
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作者名：臓臓臓 | 作成日時：2020年8月5日 10時
