【!】終末の嗤い方。Ⅱ (ページ32)

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　○　運命の女ページ32

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　縋られるのは、苦手だった。

「ぼくのこと嫌いでええから捨てんで」

　いつも私は縋り付いて泣いてる側だったから、どうしても引け腰になってしまうのだ。しとしとと泣きながらひっつき虫みたいに抱き着いてくる鬱さんはいつの日かの私を見ているようで気の毒に見えた。

　……私はずっとただ優しく抱き締め返されたかったのかな。

　鬱さんは抱き締め返した私の顔を見て少し目を瞬かせてから、へらあと子どものように笑う。

「……あは、ルイちゃん。今、どんな顔しとるか気付いとる？」
「……あ、」
　優越感に浸ったどうしようもない女の顔がその藍色の瞳には映っていた。はは、と思わず声に出して笑ってしまう。だってなんだか、出会った頃の鬱さんの顔にそっくり。

「わたしたち、なんだか似た者同士ですね」

　ぐちゃぐちゃになった鬱さんの顔に私から初めてキスをした。たったそれだけで幸せそうに笑うのだからまるで私が神様にでもなったような気分だ。

「僕のこと捨てたら殺すから」

　忘れんといてな、とそういって彼は私の左手の薬指を噛む。

「い、ッ……」
「指輪のかわり」

　ちゅ、とキスを落とされたそこには指輪のような噛み跡をつけられていて、じくじくと痛むのに心地よくて、そっと撫でる。

「あいしてる」

　愛というには少し粘性を帯びたその言葉。

　ただその言葉に満たされて心地よかった。

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