○ 見返り ページ30
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「ルイちゃん？ おーい、ルイちゃん？」
「えっ、はい、なんですか」
「さっきからずっと呼んどったよ、なに？ あの胡散臭い男に一目惚れでもしたん？」
ルイがエーミールに送り届けてもらってから少し、大きな部屋の端の方でぼーっとしていたら突然鬱に話しかけられた挙句、突然そんなことを言われルイの目は分かりやすく泳ぐ。
「ひと、一目惚れではないです。すごくやさしかったので、珍しいなと」
「あは、優しいのが珍しいとかルイちゃん何言うとんの。ほらボクめっちゃ優しいやんか」
「？？」
「心底何言うてるかわかりませんみたいな顔せんといて」
「⋯⋯事実です。あと胡散臭い男の人ってさっき言いましたけど、鬱さんが言えることじゃないですよ」
「ホンマに言うようになったな」
「ルイはホンマにすぐに人を信じるもんなァ」
ぐっ、と突然背中に伸し掛る体重。上裸のゾムだった。後ろから覆い被さるように抱き締めて、もにもにと頬っぺを触りながらルイを揶揄う。ルイは鬱陶しそうにしながらもされるがままだ。鬱も鬱でうんうんと「ホンマにそれ、ルイちゃんすぐに人信用する。疑わなきゃアカンよ」と頷いている。
「それに、ナァ⋯⋯。ルイ。明後日には此処を出ていかなアカンけどさ、あの子どもはどうするん」
振り向けば、ペリドット色の悪意と視線が混じる。きゅぅ、と細まっていく瞳は蛇のようにルイの心を縛り付けていく。ヒハ、とたまらないといいたげな不気味な笑い声をあげるゾム。
「別に拠点に連れてったってもええよ。ただ俺に荷物が増えるのに見返りがないのはおかしいやんなルイ」
「⋯⋯ん？ ハ！？！ いやッ、ああ"ッ！？ いやいやルイちゃん、ちょおルイちゃん、変なこと言わんといてな。絶対あの子連れてく必要なんかないやん。ここに置いてけばええやんあの子ここで生きていけるって、なぁ」
「⋯⋯うるさいです」
しがみついてくる鬱を押しのいて、ゾムの瞳を真っ直ぐと捉えるルイ。
「⋯⋯見返りは、私の時間と身体です。
それで足りますか？」
「え、セ ックスしてくれんの？」
「イヤー！！！！！イヤヤーー！！！するならボクも混ぜてえ！！！！」
覚悟を決めて言い放ったはずなのになんだその反応、と顔を顰めるルイ。違うのか、求められてたのこれじゃないのか、と段々と恥ずかしさすら感じて赤みを帯びる顔。鬱は相変わらず喚いていた。
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作者名：臓臓臓 | 作成日時：2020年8月5日 10時
