【!】終末の嗤い方。Ⅱ (ページ26)

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　○　アホで間抜けでページ26

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「夜市なんていつなにがあるかわからへ、」

　からのドカーン、なんてイタリア軍の降伏並の速さでフラグをこの男は回収した。テントは吹き飛ばされ、テントにいた人間も弾き飛ばされて、三人で仲良く抱き合いながら吹き飛んだルイ鬱ゾムは何があったのかわからないまま、痛む身体を起き上がらせる。しかしルイだけは起き上がる際にずっと微妙な顔をしていた。

「あの、このタイミングでどさくさに紛れて胸揉まないでくれますか二人とも」
「デカなった？ボクのお陰かな？」
「やわらかいな」
「状況分かってます？」
　何なんだこの人たち、とルイは顔を顰め、胸を揉む手を押し退け、爆発した方向をみる。すると暗闇からみえるのはおどろおどろとしたナニカの触手。

「───あ、これ」

　見覚えのあり過ぎるソレにルイの顔は一気に青くなっていく。

　咆哮するソレはあの日見たナニカだった。しなる触手、逃げ惑う人間が一瞬で肉塊へと変わる様子にルイは唖然としている。明らかにあの時のよりずっと凶暴性が増しているではないか。
「さいっっあくや！！！夜市の場所また変更になるやんけクソ！お前らはよ立てって！！契約がまだ途中やし、連れてくから！！逃げんで！」
　ロボロの声に弾かれたように鬱とゾムは立ち上がり、鬱が腰を抜かしたルイに手を差し出す。

「ルイちゃん立てる？！」
「は、はい」

　きゅっ、と握られた手は少し湿っていた。

　断末魔がそこらじゅうから聞こえてくる。ナニカの咆哮によって寄ってきたゾンビがさらにまた夜市にいた人間を苦しめた。
　先に行こう先に行こうと人間が押し出し合い、余計に前に進めなくなっている中、ルイの視界の端にある物が映る。

「あ、」

　鎖に繋がれた女達が出して！出して！と泣き喚いていた。

　初めてルイが崩壊した世界で見る弱い人間の行き着く先だった。

　その光景を見ている時だけ、やけにルイにはすべてがスローモーションに感じられた。耳が遠くなっていく感覚さえする。
　足がとろとろと覚束なくなって、しまいには立ち止まるルイ。

　それに鬱は気が付くと、その視線の先を辿り黙り込み、渋い顔をした。握った手が緩まり、するりと抜けていく手。流れていく人間に押し出され、鬱はそのまま歩き出していく。

　置いていったのは彼だというのに、最後まで鬱は置いていかれた子どものような顔をしていた。

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