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｢え、何その顔｣
｢いや、その、えっと⋯⋯鬱さんって結構頭、いいですよね。それで、私いつも鬱さんに助けられてるなって思って｣
｢ちょお、キモイわ。急に褒めんといてよ｣
｢褒めるとかそんなつもりはないですよ。ただそう思って⋯⋯、お礼も言ってなかったですし。あの時、私の手をひいてくれてありがとうございました｣
うっ、と鬱は真っ直ぐな目をしたルイに顔を顰めた。ルイも分かってはいたのだ、鬱がいなければ自分が今ここで座って息をしていなかったことくらい。
ただ自分だけが生き延びて、あんなにたくさんいた筈の見捨てて生きていることにちっぽけな心が追いつけていたなかっただけで
ルイはわかっていた。
｢⋯⋯ルイちゃんって結構男に染まりやすいタイプやろ｣
｢は？｣
｢や、なんもないわ。聞かなかったことにしといて、さっさと逃げよか｣
重い荷物を背負って、鬱は誤魔化すように笑った。ルイもそれをわざわざ問いただすような真似はしない、同じように荷物を背負い、扉の前のロッカーを退かした。
ドアノブに手をかけ、片手には金属バットを持ったルイが一度だけ後ろに振り返る。
｢鬱さん、変身して私の事操ってもいいですよ｣
｢⋯⋯やめとく、気分ちゃうし｣
｢あ、気分なんですね｣
そうか、とルイは頷くとそっとその扉を開いた。廊下にはゾンビがいる様子はない。きっとナニカが暴れたその場所に集まっているのだろう。
｢職員用の駐車場ってどこにあるんですかね｣
｢まずはショッピングモールの地図みぃひんと分からんから探さなアカンね｣
こうみると何やかんや言って二人は上手くいっているのだからすごい。
お互いに嫌いだと言っておきながら、お互いの弱い部分をわざわざ見せあって、近すぎず遠すぎない距離で二人は“相棒”としての関係をそれなりに上手く回し始めていた。
ショッピングモールの裏側から表側への扉をほんの少しだけ開けば、二人の目にはそれなりに多くのゾンビが目に入る。しかしゾンビは一心不乱に真ん中の方へと足を向けていて、顔を覗かせた二人には一切興味を抱こうとしなかった。
｢な、んなんあれ｣
ゾンビの向かう先に目線を送るとその先には銀世界が広がっていて、よく目を凝らせば、パーカーを着た誰かがぴょんぴょんと飛び回っていた。
悪魔のような嗤い声がルイの耳を舐った。
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作者名：臓臓臓 | 作成日時：2020年8月5日 10時
