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ゾムは語るのも惨いほど劣悪な家庭環境で育ち、それこそドラマのフィクションで語られるようなことも彼は経験し、愛情のあの字も一切浴びたことのない人生を生きてきた。
彼は、ゾムは、世界崩壊の日に壊れてしまったのではなく、ずっとずっと昔から壊れてしまっているのだ。
そんなゾムの言う“光”にルイがなぜなったのかは分からない。でも確かにゾムはルイに対し、可能性を感じていた。
ルイの死にたくないと叫ぶその感情は機械のように生きてきたゾムを揺さぶるのには充分だったのだ。生きようと死にたくないと藻掻くルイは不思議とゾムを高揚とさせた。色のない人生にひとつ色がついた瞬間だった。
不器用でドン臭くて泣き虫で偽善者でそのくせ無意識に人に頼ろうとするルイだからこそいい、とゾムは身体を震わせる。自分のことで精一杯になってあぷあぷと溺れそうになりながらも必死に食らいつくルイは眩しいほどに愛おしく美しい。
「⋯⋯やっとみつけた俺の光、」
おれを救ってくれ、とゾムは微笑んだ。
そんなゾムにルイは勘弁してくれと言いたげな顔をすると、胸倉を掴んでその綺麗な顔に思いッきり額をぶつける。
ゴチン、という音と共に唖然とした表情で仰け反るゾム。
「救えとか光とか訳わかんないことばっか言わないでください！！ 私はッ、私のことで精一杯なんですよッ！！
自分のことくらい自分で救え！！」
吠える、ルイの叫びは痛いほどゾムに響く。そのペリドットを大きく見開かせて、何度も何度も瞬かせた。どこまでも自分本位その言葉にゾムはそれでこそルイだと言わんばかりに目を吊り上げ大きく笑う。
「カ、ハハハ！ ホンマにッ、ルイっお前ってやつは！ でも残念やったなァ！ 何でもする言うたのはルイや！
俺はお前に救ってもらうまで死ぬまでしがみつくで！」
ゾムの
ゾムの横をルイの投げたナイフが横切って、ゾンビの頭に突き刺さった。彼の取りこぼしたゾンビをルイは何も言わずに助けたのだ。なんだかんだ言ってやっぱりルイは甘っちょろい。
黙ってればええのに、とゾムは肩を竦める。
「眩しいなぁルイ」
「⋯⋯曇天ですけど」
「そういうことちゃうねん」
それを聞いてゾムはまたからからと笑う。ルイはどこかまだ不服そうだった。
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作者名：臓臓臓 | 作成日時：2020年8月5日 10時
