煙草の本数 ページ35
Aが微笑んだのは
愛しい人が、店に入ってきたから
そして次元もまた
その姿に微笑んだ
｢いらっしゃい｣
次元｢バーボンをストレートで｣
｢なぁに？初めて会った時みたい｣
次元｢今日の一言目は、これだって決めてきたんだ｣
｢へえ、じゃあこれも一緒じゃないとね｣
そうしてAはベーコン豆の小鉢を出した
次元｢……こいつが食いたくて、店を何件か回ったことがある｣
｢何してんのよ｣
次元｢バーボンと一緒に、出してくれる店をだ｣
｢ふーん、で？あったの？｣
次元｢1軒だけな｣
｢随分いい店だったみたいね｣
次元｢いんや、閑古鳥が鳴く店だったよ｣
その言葉にAはﾑｩっと頬を膨らませる
次元｢……だが、バーテンはいい女だった｣
｢だった。じゃなくて、いい女。でしょ？｣
Aは次元からベーコン豆を取り上げる
次元｢！……いい女が、居た｣
次元は慌てたように訂正した
｢うん、おあがりなさい｣
手にした小鉢を見てﾎｯとする次元を見て微笑んだ
｢あ、次元これ……｣
思い出したようにあるものを取り出すと、次元に差し出した
次元｢ん？……あぁ｣
それはあの日、次元が置いていった黄色いネクタイ
｢付けてくれたのに、ごめん……似合ってたわ｣
次元の首元に締められたネクタイを解き黄色いネクタイを縛った
次元｢Aのネクタイも良いじゃねぇか｣
そしてAの首元にあるネクタイもまた、次元から貰ったものだった
｢ちょっと煙草臭いけどね｣
次元｢大人っぽくていいって言ったじゃねぇか｣
｢吸いすぎだって言ってんの｣
次元｢……なら、1日5本でどうだ？｣
｢内訳は？｣
次元｢そうだな……
起きて1本
朝飯前に1本
昼飯後に1本
晩飯後に1本
寝る前に1本｣
｢なら6本にして｣
何故か増えた事に次元は不思議そうに首を傾げた
｢私の前で吸ってよ、お酒飲みながら｣
目を細めて笑うAに次元は笑った
次元｢そいつぁ、うまい煙草が吸えそうだな｣
｢飴はちゃんと食べてくださいね｣
間髪入れずに言いたかったことを言ったAに、すぐさまため息をついた
次元｢降参だよ｣
｢お粗末様｣
日本食 【次元side】→←イエローパロット 【主人公side】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 111人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
