望んだ言葉 【主人公side】 ページ31
どこか
次元の事を彼と照らし合わせていた私はそんなわけが無いのにと感じながら目を再び強く瞑った
「怖い…っ、もう一人は嫌なの……」
呟くように言葉を紡ぐと
温もりと同時に、耳に響く甘い声に目を開いた
次元「A」
帽子の間から見えた、優しい瞳が私の瞳を捉えた
次元「……A」
「っ……」
次元「A」
何度も呼ばれる、望んだ言葉にボロボロと涙が零れた
左手で肩を抱かれ、右手は頭をゆっくり撫でた
「…嫌いじゃ、ないの…?」
次元「言ったろう、嫌いじゃない」
その言葉に次元の頬に手を触れた
それを合図にするように、再び目を瞑ると
ロマネ・コンティの、複雑な味が口に広がった
柔らかい感覚が離れるのを感じ目を開くと次元の髭が頬をくすぐった
次元「忘れてなくてもいい、俺のそばにいてくれ」
いままでに見た事のない表情の次元に微笑んだ
「もういい、だから居なくならないで…」
次元の胸に顔を埋めると、呟くように言う
「大切な人…次元と一緒に生きたい」
それに応えるように強く抱かれる
甘い香りに、顔を上げた
「煙草、なんで吸わないの?」
次元「Aが禁煙しろって言ったんだろうが」
「あれ、そうだっけ」
次元「おい」
「ふふ、でもね」
次元の胸ポケットの膨らみから飴を取り出すと口に含む
「飴の甘い香りも好きだけど…煙草も大人っぽくていいよ」
そうして柔らかなベットに身体が沈むと
あの日のように次元がこちらを見下ろすと
触れさせてもらえなかった頬に触れる
次元「……あんまり煽ってくれるな」
「好きよ、次元」
次元「チッ………嫌なら言えよ」
「蹴り飛ばすわ」
次元「おっかねぇ女だな」
そうして笑い合うと
お互いを求め合うのだった
111人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ